第11話 ビルディング03
今日の幹部会も大荒れ状態となっていた。国からの催促の連絡が俺宛に何通も来ていた。社内でも国が打ち出した政策に賛成派と反対派で二分していて、社長である私でも収拾がつかなくなっていた。
「ですから今回の政策を進めたら、人間としてのですね――」
「現在の普及している住居には殆どAIが搭載されていますよね? アンドロイドも所詮はそのAIと同じ機構を使っているに過ぎません! 形がスマートスピーカーから二足歩行に変わるだけではありませんか!」
頭の痛くなるような激論が交わされる。
「社長! 慎重なご決断を!」
「社長!」
「社長! ご判断を!」
社員たちは俺へ厳しい視線を向ける。この局面、俺は正しい方向が分からなかった。その時、西本が立ち上がった。
「社長。この会社と社会の未来をより豊かにする選択をお願いします」
会議室は暫くの沈黙に包まれた。この中で一体何人がアンドロイドという
すると、会議室の入り口の扉が開いた。そこに立っていたのは、俺の秘書をやっている咲子だった。彼女には緊急の連絡以外は会議に立ち入らないように命令していた。
咲子は俺の所へ一直線へ来た。
「江口社長、会議中の所申し訳ございません。只今、緊急性の高い連絡が入って来ましたので、お知らせ致します。只今、政府の人工知能省から連絡があり、江口社長の招集が掛かりました」
会議室内がざわついた。人工知能省は、今回の政策を通達してきた所である。
「また、人工知能省は我が社『アンドロイド・ディベロップメント株式会社』以外にも『フューチャー・ワン株式会社』、『日本知能工業株式会社』にも同様の通達を出している様です」
俺の会社以外もアンドロイドを製造している大手二社である。人工知能省も恐らく、今回の政策に民間企業が手間取っている事に気づいたのだろう。俺は席から立ち上がった。
「今から人工知能省へ行ってくる。恐らく、本件についてのお話があるのだろう。今この場で話し合われていた事も吟味しながら、今後の方針を練ってくる」
社員たちの驚いた顔を横目に俺は咲子と会議室を出た。
「タクシーはもう手配済みです。間もなく来ます」
咲子は常に人間よりも先回りして準備をしている。このような機械が今以上に世界に広まったとき、人間はどうなるのだろうか。
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