第12話 人工知能省Phase1
人工知能省の建物に着いたときには、既に二社の社長が到着していた。
「お久しぶりです。江口社長」
最初に声を掛けてきたのは、フューチャー・ワン株式会社の本剛だった。彼の会社のアンドロイドは主に事務作業を処理する場面で使われている。本剛の会社が開発したアンドロイドの独自OSは俺も感心してしまった程、処理スピードが速い。
「江口とは何年振りに合うことやら。君の会社も随分と大きくなったな」
本剛の横に立っていた小太りの男は日本知能工業株式会社の社長、三鷹だ。アンドロイド製造会社の中では最も歴史を持つ会社である。現在のシェア率は俺の会社の方が勝っているが恐らく今回の政策が通れば、一番データの蓄積が多い分脅威になる会社だ。
「お二人とも、お久しぶりですね。前の法律改定の会議以来ですかね」
「あの時も大変でしたが、今回も結構面倒な政策を持ち掛けられましたね」
「人工知能省はこっちの事情もお構いなしだからな。困るよ本当に」
俺たち三人は人工知能省へと入っていった。中では受付窓口を除いて殆どの事務作業を青いバッジを付けた人影が行っていた。今のアンドロイドは胸元に青いバッジを付けることを義務付けされている。即ち、ここの業務は殆どアンドロイドが遂行しているのだ。一見すれば良くある「お役所仕事」に見えるのかもしれないが、血の通っている生身の人間は殆どいない。
「殆どアンドロイドがやってるんですね」
「ここは、最近私の会社が納入したんですよ。前のアンドロイドが古くなってしまったので」
本剛が嬉しそうに言った。そうこうしていると、奥からバッジを付けていない人影が走ってきた。こっちは生身の人間か。
「急に呼び出してすいません。私、人工知能省広報の中月と言います。今から会議室へと案内致しますので……」
人工知能省は元々民間企業の寄せ集めで存在していた組合が独立して国の機関になった組織である。アンドロイド製造会社で業務を経験していた人間も少なくない。特に、日本知能工業の元社員が多いという噂をたまに耳にしている。
「こちらです」
奥の扉をずっと進んでいくと、濃く茶色い木の扉がそびえていた。ここで昔も法律改定の会議をした記憶が薄っすらとある。
「お待ちしておりました。皆さん。急に呼び出してすまないね」
「河本さん。お久しぶりですね」
彼の名前は河本
「まぁ取り敢えずは席に座ってもらおうか」
重々しい空気に包まれたこの会議室で、アンドロイドの未来を左右する話が行われようとしている。
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