クラリネット少女

未定

クラリネット少女

毎日放課後、

吹奏楽部でクラリネットを吹いていた君。

そんな君が好きだった。



内気な感じで普段はあまり喋らず、

友達と喋る時だけ楽しそうに笑う。

そんな君が好きだった。



いつかの君は俺とLINEでやり取りをしている時、

こう言った。


「私の居場所はこの中学にはない。」と。


俺は驚いた。

あんなに友達と楽しく喋ってる君でも、

そんな事を思っていたのかと。

たまにこういう深い事を言う。

そんな君も好きだった。



卒業式の前日。

俺は明日の卒業式には出ないからと、

君に告白をした。


「君と青春がしたい。」


もちろん振られた。

それでも君が好きだった。



別々の高校に入学し、

そんな君に恋人ができた。



その事を知り俺は君にLINEを送った。

嘘偽りだらけのお祝いLINEだ。

めでたいなど一ミリも思わなかった。

ただ好きでいる事が辛くなった。

だからあたかも、

もう好きではないかのような感じでLINEを送った。

「もう好きではない。」

そう自分に言い聞かせたかったのだ。



もちろんまだ好きなのだけれども。



そしてそのうち俺も恋人を作った。

少しやんちゃな子だが、

自分の考えを貫き通す、

とてもしっかりしていて良い子だ。

でも俺には合わない。

やっぱり俺は君が好きだった。



でもまた君の事を愛し、

無謀で叶うことのない片想いなど、

したくなかったのだ。



だから俺は好きな気持ちを折り曲げ、

彼女の事を好きになるよう努力した。



そんな時、

彼女が学校を辞めた。

辞めた理由は楽しくない、しんどい。

それだけの理由だが、

逆に言えば一番はっきりして分かりやすい理由だ。

そして彼女は俺に告げた。



「別れよう。」



俺は「嫌だ」という言葉も発せず、



「うん。」

と答えた。



彼女のことを完全に好きになれていない俺に、

止める権利などなかったのだ。



そしてまた俺の恋心は行き場を失った。



そんな時またクラリネットを吹く君の顔を思い出す。



そして行き場を失った恋心はまた君のもとへ行く。



片想いとは実に虚しく、

良い想いなどするわけがないもの。

それなのにも関わらず俺はまた君に片想いをする。

また無謀に君を愛し続けるのだ。



片想い、それこそが俺の恋なのかもしれない。

片想い、それもまた青春であろう。

とにかく青春というものがしたい俺は、

そう思うと少し楽になった。



ありがとう。

君のおかげで、

こんな俺でも青春ができたようです。



本当にありがとうございました。



そして今でも君が好きです。



クラリネット少女様。






ん?中学の卒業式に出なかった理由かい?

いやただ、


「俺の居場所はこの中学にはない。」


そう思っただけさ。

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クラリネット少女 未定 @sayonara_september

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