第18話 セカンドステージ ~昼食~

 僕たちはモール3階にあるパスタ専門店へ入店。店員に案内され、テーブル席へと座った。西洋な雰囲気に、町を見下ろせる眺めが相まってかなり良い感じである。


「當間君、何食べるか決まった?」


「えっと……僕はミートソースにしようかな」


「ボロネーゼね。お店一番の人気メニューみたいだし、良いと思う」


「ぼ、ぼろねーぜ?」


「本場、イタリアのミートソースのことだよ?」


「あ、そうなんだね。ははっ」


 少しあきれた顔で僕を見る結城さん。


「當間君……女の子を落とすには、まずパスタに詳しくないとダメ」


 そこから結城さんの講義が始まる。パスタは小食な人でも気兼ねなく食べれる料理であり、様々なメニューがあるとの理由で、女の子はみなパスタが好きらしい。デート時は、優先してパスタのあるお店を選ぶようにとのことであった。


「べ、勉強になります」


「ついでに一つ! 女の子がみんなド〇カム好きとは思っちゃダメだよ。この曲流しとけばいいとか、見くびらないでね」


「ちなみに結城さんは嫌いなの?」


「う~ん、好きでも嫌いでもないかな」


「そうなの……」


 中途半端な答えなので、反応に困る。好きなものは人それぞれだと思うのだが、せっかくのアドバイスなので覚えておかなきゃ。


♢♢♢


 しばし経ち、パスタが運ばれてきた。結城さんはカルボナーラを注文したらしい。


「おいしい!」


 ボロネーゼを食した僕は、思わず声を上げる。さすが結城さんの選んだ店だけのことはある。


「でしょ、でしょ~♪」


 僕の反応に気を良くした様子の結城さん。そして、自分もパスタをフォークにクルンと巻きつけ、パクッと一口頬張ほおばる。


「う~ん、確かにうまい! さすが私のチョイス」


 なんだか、いいな、こういう反応。普通のJKって感じがする。いや、実際、結城さんはJKなんだけどさ。


「ねぇねぇ! せっかくだし、シェアしようよ」


「いいね。じゃあ、取り皿もらうよ」


 僕がオーダーボタンを押そうとすると、すかさず……。


「はい、どーぞ」


(えっ?)


 結城さんが自分のフォークに巻いたパスタを一口、僕の前へと差し出す。


 これって、いわゆる『あ~ん』ってやつではないのか? いやいや、その前に間接キスでは? 一瞬、脳内がパニックおちいり、フリーズする。


「食べないの?」


「いや、それはちょっとまずいと思って」


美味おいしいって!」


「そういう意味じゃなくて……その、それは間接なんちゃらといいますか」


 恋人どころか友達もロクにいない僕に、この間接キス&あ~ん攻撃は即死級だ。


「照れないでよ……」


「だ、だって」


「あのね、こういうのはさりげなくってのが良いって書いてあったの。そんな堅い反応されると……こっちだって、恥ずかしいんだから」


「ごめんよ」


 書いてあったってなんだろう? 言葉の意味はよくわからないまま、結局、ぎこちない僕のせいで人生初の間接キス&あ~んを逃してしまう。

 ちなみに、その後は取り皿をもらってシェアしました。はい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る