第17話 ファーストステージ ~映画~

「顔真っ赤にしちゃって、當間君ったら~」


「ち、ちがうよ、僕はただ」


「それよりも映画始まるよ。早く!」


「う、うん」


 結城さんに腕を引っ張られ、連れ立って歩く。いやはや、その、なんというか……幸せだなぁ。と、この瞬間を噛み締める。

 こうして、デートコースのファーストステージ(僕が勝手に思い込んでる)であるモール内映画館へと入る。上映作品はアニメから洋画までと様々だが、一体どれが良いのだろうか。チョイスに迷ってしまう。


(やっぱ、ここは恋愛系かな?)


 経験がないから、わからないけど、普通デートと言えばロマンチックなものが鉄板な気がする。となると、この洋画のラブロマンスあたりはどうだろうか? 僕が提案しようとすると……。


「ねぇねぇ、これにしようよ!」


「どれかな?」


 そんな僕を尻目に、結城さんが指定した映画はこれである。


(!?)


 『JAWNSジョウンズ』……作品看板の絵を見る限り、これは明らかに人喰ひとくいいザメの映画だ。


「これって、デート向きじゃなくない?」


「でも楽しそうじゃん! 私は絶対、これ!」


 結局、強引に押し切られる形で、僕たちは『JAWNS』を見ることになった。上映中は、デート時に見るとは思えないような惨劇の内容がスクリーンへと映し出される。あんじょう、人がバンバンと喰われていった。


「ぐふ、ぐふふふ」


(!?)


 わろてるで……わろてるで、おい。人が死ぬ姿を見て、楽しに笑っている。女の子はみんなそうなのか?


「このサメ、いいね~♪」


 あるいは結城さんがサイコパスなだけか? ロマンチックの欠片かけらもない、そんな2時間と少しの間であった。


「面白かったね~♪」


「うん、そうだね……」


 映画を見終わり、なんだかいろんな意味で僕はヘコんでいた。


「さて、お次はお昼だね。どうしよっか?」


 結城さんが元気にお腹をおさえながら言う。あんなもんを見た後によく食欲なんてあるよなぁ。

 おっと、いけない、いけない! 既にセカンドステージの昼食タイムだぞ。切り替えて、良いところを見せなくちゃ! ヘコんでる場合ちゃうで!


「えっとね、おすすめのファミレスがあるんだけどさ……」


 実は昨日、周辺のお店を軽く調べておいたのだ。近場でそこそこ評判も良く、そこを紹介しようと、スマホの画面を開こうとする。


「そこよりもさ、モールの上階に気になるパスタの専門店があるの♪ そこにしない?」


「え? い、いいけど」


 遠回しに却下されたようだ……。


「よし決まり! じゃあ、お客さん、ついてきてくださーい」


「はい……」


 結城さんにリードされっぱなしである。セカンドステージにおいても、良いところを見せられない僕なのであった。

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