第13話 図書室
「あれ? いない?」
図書室へと入った僕はあたりを見回すが、結城さんらしき女性の姿は見当たらなかった。というのも、時をさかのぼること数時間前……。
「放課後、時間ある?」
「え……」
休み時間、急に僕の席へと来た結城さんに戸惑う。一体、どうしたというのだ?
「じゅ、塾に行くまでなら……」
ドキドキしながら答える。これって、もしかして、どこかに行こうというお誘いではないのか? 塾、さぼろっかな?
「じゃあ、放課後もちょっと勉強見てあげるよ」
「……」
ですよねぇ。というわけで、放課後、図書室で勉強会をするに至ったのだ。
カウンターにはいかにも図書委員って感じの
(いや、あれは)
明らかに不自然な空席が一つあることに気づく。席の上に教科書やら、
「わぁっ!」
(!?)
『ゴン!!』
驚くこと束の間、
「つぅ~~~~~……」
頭を押さえ、その場で
「あ、あの結城さん、大丈夫?」
「くぅぅぅ、天井の位置関係を把握してなかったぁぁぁ」
「たんこぶできてない? 保健室行く?」
「くふっ、たんこぶって……くふふ」
頭を打っておかしくなったのか……結城さんは痛みに悶えながら、なんか笑っている。
(大丈夫かな? この人)
もしかして普段のイメージに反して残念系美少女なのか、結城さん。
「はぁはぁ、當間君……驚いた?」
涙目で結城さんが問いかけてくる。
「うん」
「じゃあ、ウケた?」
「うん」
「その様子だと、両方違うな? くぅ」
そういうと結城さんは、首を
「あの……」
いつの間にか僕らの
「図書室では静かにしてくれませんか」
周りを見回すと、図書室にいる生徒みんながこっちを見てる。ここが図書室であるということをすっかり忘れていた。
「ああっ……すいません」
謝る僕。気まずい雰囲気の中、結城さんを席へと座るよう促す。
「変なことしてると、イメージ崩れちゃうよ?」
「だって、當間君が遅いんだもん」
痛みがだいぶ
「遅れたのはごめん。心の準備がなかなかできなくて」
「そのおかげで私の脳天はかなりのダメージを負ったんだけどぉ?」
「ほ、本当にごめん」
僕は顔の前で両手を合わせ、必死に謝る。
「許してほしい?」
「許してください。成績優秀な結城さんに、勉強見てもらえるまたとないチャンスだし」
「その代わり条件一つ!」
「え? 条件?」
「まぁ、大して難しいものじゃないから安心して」
「わ、わかりました」
僕の返答に満足したのか、結城さんがニタニタ顔になる。いささか、はやまったかもしれない。結城さんに一体何を要求されるのか……少し怖い。
「ね、ねぇ、結城さん。その条件ってなに?」
「まぁまぁ、それはあとでゆっくりとね」
「……(汗)」
「それよりもしょうもないことでだいぶタイムロスしたし、早く勉強しよ?」
「うん……」
こうして、想像していたシチュエーションとは、あまりにもかけ離れすぎた二人っきりの勉強会。ロマンチックって、思ったより難しいものなんだなぁ。
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