第2話 出会い 2

 神の悪戯いたずらだろうか。

 結城さんといえば……確か、学校では美少女として超有名である。それに、可愛いだけではなく、ものすごく頭が良いらしい。これまで告白を決意した男が、どれほど蹴散けちらされただろうか。

 憧れているという点では、僕もその中の一人ではあるのだが、クールすぎる彼女に声をかけることすら怖くて、同じクラスだというのに、接点はゼロである。


「もしもし~? 當間君?」


「あっ、ごめん」


 その結城さんがなぜ僕なんかに電話を? そもそもなぜこの番号を知っている? 

 疑問は尽きることなく浮かび上がるが、今は通話中である。とりあえず先に用件を聞こう。


「僕に何か用?」


「當間君、参考書は何を使ってるの?」


 参考書? 急に何を言い出すんだろう。


「確か『即読解! これであなたも志望校に受かる』っていうやつだったと思うけど……」


「ピンクの表紙のやつでしょ?」


「そうだけど、何で知ってるの?」


「今、私が持ってるよ」


「えっ!?」


 僕は慌てて自分のかばんを探るが、ない……忘れてきたんだ。学校に。


「明日まで預かっておこうか?」


「ちょっと待って。今どこ? できれば取りに行きたいんだけど、それ」


「えっ? 今から?」


「無理かな? 少し今日の復習をしとこうと思って」


 参考書を取りに行くこともそうなのだが、できるなら結城さんと一度でいいからじっくり、お話をしてみたい。明日になったら、参考書をただ返してもらって終わりだ。

 神がくれた、二度とないチャンスを無駄にしたくない。そんな、やましい理由からの提案であった。 


「別にいいよ。今学校にいるから、取りに来て」


「え、学校にいるの?」


 僕は少し驚いた。時刻はもう午後9時を回っている。こんな時間に学校で一体何をしてるんだろう?

 さっきから謎ばかりだ。さすがは結城さん……クールビューティーなだけではなく、ミステリアスな面まであわせ持っている。

 

「わかった、今から行くよ。少しだけ待っててもらっていい?」


正門せいもんは締まっているから裏門から入ってね。あと、裏門から一番近い校舎の鍵、開けておくから」


「ありがとう、それじゃ」


 こうして通話は切れた。参考書を取りに行けば色々と彼女の事がわかるかもしれない。僕は学校に向かった。今のままじゃ、疑問ばかりで気になって、眠れそうにないし、復習だってできない。


 それから、10分ほどして……毎日通っている高校の前へとやってきた。夜の校舎は普段と違っていて、異様な雰囲気だ。


(どうしよう、思った以上に不気味だ)


 自分で取りに行くと提案しておいてなんだが……帰りたい。不気味な雰囲気をかもし出す校舎に躊躇ちゅうちょする僕。しかし、今帰ってしまえばなんの解決にもならないだろと自分自身に言い聞かせる。


(結城さんも教室にいるんだ、怖がる必要なんかあるもんか!)


 勇気を出し、裏門から校内へと入っていった。侵入という言い方の方が適切かもしれないが。

 まぁ、そこは気にしない、気にしない。

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