第25話 変わり始めた日々
「おお!?」
2学期の中間試験の結果に僕は驚いた。夏休みが終わる頃まではどんなに頑張っても上がらなった成績がグングンと伸び始めている。平均が70点以上という、僕とは到底思えない好成績だ。
どれもこれも、ひとえに勉強に付き合ってくれる結城さんのおかげであろう。素晴らしい三蔵法師さまの導きにより、終わりのない旅路に光が差してきた。あとはその光に向かって歩いていくだけ。感謝の気持ちしかないが、自分の席から見える結城さんは相変わらず背中姿がクールなだけであった。
♢♢♢
「當間君、テストの点数伸びたね。やったじゃない」
「いやぁ、結城さんのおかげです」
放課後。
図書室で勉強をする僕たちの風景もすっかり日常と化している。先ほどのクールさは鳴りを潜め、僕の成績向上に結城さんは上機嫌で、
「当たり前でしょ? この天才・鬼才の結城さんが勉強を教えてあげてるんだから」
「あはは、すごい自信」
「もしかして疑ってる? なんなら私のテストの合計表みせようか?」
「それはやめて。また自信失くしちゃうから」
「相変わらず自信なさげ~」
指を振りながらおちょくってくる。
「そういえば、結城さんはどこの大学目指してるんだっけ?」
「え?」
「そういえば聞いたことなかったなぁと思って。もちろん行くでしょ?」
「あ~、まぁ、そうだね」
えらくご機嫌だった結城さんのどこか歯切れの悪い返事。結城さんぐらいの成績ならAランクの大学……いや、本気を出せばSランクですら射程圏内かもしれない。
「もしかしてまだ決まってないとか?」
「わ、私のことはいいの! それよりも今は當間君のことでしょ!」
「そうかもだけどさ」
まずいこと聞いちゃったかなぁ。なんか濁されてしまった。
「そろそろ閉館です。とっとと帰ってください」
「おっと、もうそんな時間?」
勉強の合間に雑談をはさんでいる内に、時刻は既に19時近く。図書委員のメガネっ子が僕らを追い出すのも定番になってきた。
「……そろそろ帰ろうか。これから塾?」
「あっ、そうそう。言おうと思ってたんだけど、塾はやめたんだ」
「えっ? そうなの?」
「正確には土日と模試の時だけ。平日は結城さんと勉強するし、その方が授業料も安くなるし、なにより効率が良いと思って」
「ふ~ん、そんなに私と居たいんだぁ~」
うっ、いつもの結城さんに戻っている。不意打ちの図星にドキッとする。
「あはは、なーんてうそうそ~♪」
「あはは……」
あながち間違いじゃないことに苦笑いを浮かべ、図書室を追い出された僕らは教室へと戻って行った。
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