第11話 妹よ 1

「~♪」


 夜の勉強会を終え、結城さんと今日も家路を共にした僕。鼻歌交じりで帰宅し、ルンルンと上機嫌で部屋に入る。


「今日もいい一日だったなぁ~」


 なんて物思いにふけっていると……。


『私、参上!』


 ドタドタと階段を駆け上がり、乱暴にドアを開け、部屋に侵入してくるやつがいた。


「なっ、ななみ!?」


「ははは、驚いたな! 我があにぃよ!」


 こいつは4つ下の妹、那波ななみである。那波はいわゆる中二病というやつで、よくわからない言動や行動が目立つ女の子だ。おまけに腐女子でもある。

 僕や親父には似ず、母似で端正たんせいな顔立ちをしているが、その中二病のせいですべてがマイナス方向へと進んでいる。今だっていきなり謎のポージングを取る始末だ。おそらく、最近はハマっている特撮番組のヒーローポーズなのだろう。たった一人の妹でありながら、こいつの扱いには苦労をさせられる。


「いきなりなんだよ!」


「いや、あにぃが部屋に閉じこもりきりだから、いけないことしてないか心配になって」


「ばかっ! そんな事するか! 仮にそうだったとしてもさっしろ!」


「え~……でも、あにぃのそういう姿見たいじゃん♪ 妄想のおかずになるし~♪」


「……」


 ぐへへと笑う姿は、我が妹ながらちょっと怖い。


「よ、用がないなら出てけよな」


「そうだ! お母さんが呼んでたよ。模試の結果見せろってさ」


「マジ……?」


「マジマジ♪ いっぱい怒られてきてね。しょんぼりしたら、私が慰めてあ・げ・る」


「ふざけんな、お断りだ」


「ええぇ~、なんでよ~。普通、男ってこういう女からのモーション喜ぶでしょ~?」


「まず、僕はお前を女として見ていない」


「むぅぅぅ!!」


 どことなく悔しそうな顔をする那波を放っておいて、僕は模試の結果用紙を持って階段を降りる。


(はぁ……先延ばししていたお説教か)


 重い心持ちのまま、僕はリビングにて母に模試の結果報告を行う。案の定、母からの説教が待ち構えていた。30分ほどの時間をかけ、ようやく解放される。

 母め……那波には甘い癖に、僕にはとことん厳しんだから。


(今に見てろよ。僕には結城さんという教師ができたんだ……いずれ見返してやる)


 悔しさをみ締めつつ、ヘコみながら部屋へと戻る僕であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る