第7話 恋煩い

 色々あったせいか……ようやく僕が家に着いた頃には、既に午後10時を過ぎていた。

 母が「この子は連絡もしないで!」とものすごく怒っている。携帯にも何度か着信があったようだが、全く気付かなかったのは僕の落ち度である。母へ軽く謝罪を済まし、自分の部屋がある2階へそそくさと引っ込んだ


「はぁ」


 部屋に入るなり溜息をつく。背負うタイプのかばんを放り出し、すぐさまベッドに横になった。

 疲れた……そして、すごく長い一日だった。


 まず模試が返され、結果は最悪……でも、結城さんと明日から勉強ができることになった。そう、勉強を教えてくれると約束してくれたのだ。

 

「くっ」


 嬉しさがこみ上げる。たかぶる感情に耐えきれず布団をかぶる。


(僕は乙女かっての)


 一旦、冷静になり、ベッドに座る姿勢へと体勢を変える。

 たった一度でも話せれば奇跡に近いというのに、それが明日から一緒に勉強だなんて……今でも信じられない。


「はぁ」


 またしても溜息がれる。これが恋煩こいわずらいというやつなのだろうか。


「よしたかー! 晩御飯はー?」


 思いにひたっていると、部屋の外から僕を呼ぶ母の声が邪魔してきた。どこかブルーになっている僕に、今の母の声は鬱陶うっとうしい以外の何物でもない。


「いらない! お腹空いてないから!」


 僕は大きめの声で返答する。


「何言ってんの! ちゃんと食べなさい! あと、模試の結果はどうなってんの?」


 うわぁ……そういえば模試の結果を報告しなけりゃならないんだった。くそ、こんなソワソワした気持ちのままでお説教を食らうのか。一日のめとしてはなかなか最悪である。

 僕は慌てて母への言い訳を考えるのだが、なかなかいいアイディアが浮かばない。


(まいったなぁ)


 手詰まりの状態のまま部屋から出られずにいると、ドアの前でごちゃごちゃ言う母を誰かがさとす。すると、コンコンというノックと供に、今度は親父の声がした。どうやら親父が僕をかばってくれた様子である。


「義孝、あけるぞ?」


「うん」


 親父はドアを開け、体の半分ほど僕の部屋へと入る。


「模試の報告は明日でいい。ただ、晩飯だけはちゃんと食っとけ」


「わかったよ」


 ぐちゃぐちゃしていた脳内だったが、親父の言葉で少し落ち着いた。

 安心感したからか、腹も空いてきた。僕はベッドから立ち上がり、部屋の入り口へ向かう。


「まぁ、明日からまた頑張れ」


 僕の様子を模試の結果のせいだと思ったのか……親父は僕の肩を軽くたたきながらそう言うと、一足先に下へと降りていった。C判定にヘコんでいるのは確かである。だけど、結城さんという女の子の存在が僕を悩ませていることは夢にも思わないだろうな、きっと。

 一階へと下り、僕は食卓で母が用意した夕飯を食べ、今日は眠りについた。

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