1-1『奴隷都市の闇』

暗い空より更に黒い路地裏を歩く人影が一つ。

「……」

大男であるルージュは深くローブを被り路地裏を進むが、次第に一軒の寂れた石建築の建物を発見し、そこに入る。

埃が溜まっていたのかドアを開けた拍子でモロにそれを被ってしまった。

「……」

何も言わず猫柄のハンカチで叩き終わると目的の場所に向かう。

……そこは風呂場だった。

ルージュが何処と無く手を叩くと備えられていた鏡が光り出した。

そして鏡の前に近づき指を指して合言葉を言った。

「お前は誰だ?」

呟いた瞬間鏡の輝きは消え失せ床から音がしてきた。

ジッとそれを見つめていると床が浮き開かれた。

正しくは隠されていた穴が床を外した事で露わになったと言えるだろう。

そう考えていると浮いた床から白装束が姿を現わした。

「入れ」

ルージュは持ち出しの鞄から仮面を取り出し被り頷いて穴に入っていった。

音を立て元に戻された風呂場は再び静寂を取り戻す。

途端夜空に『青色の火花』が打ち上がった。

それに同調するかのように天井に張られる蜘蛛の糸が吹き荒ぶ風に吹かれ散らされた。

◇◇◇



5人は薄暗い長大な通路を歩いている。

近接武器を持った白装束、弓矢を持った黒装束が二人の背後にそして最前列に二つの色を別けた服と灰色の三角頭巾を被る男が先導している。

地下な為冷えた空気が身体を撫でる。

場所が場所な為饐えた臭いが充満している。



その道中別の家から入ったのであろう他の者達も頭巾を被り別の穴から降りてきた。

例に漏れず皆が仮面を被りローブを羽織っている。





「着いたぞ」

行き止まりの穴の壁には純金で出来ている格子があった。

慣れた感じで入ろうとするルージュに対し背後から声が掛かった。

弓矢を持ってる黒頭巾の男だ。


「じ……実は僕チャンピオンのファンだったんです」

そう言い慌てた様子で弓と筆を差し出した。

墨の代わりに腕を斬り血を流した。

「……奇特な奴だな」

言いながら筆に血を濡らしサインを書く。

「此処に居る奴らは皆そうですよ」

振り向くと白頭巾が紙袋に包まれるソレを差し出していた。

受け取ると灰色の男が扉を開けた。

「ちなみに私も君のファンなんだ」

「あぁ……そう」

生返事で終わらすとドアの中へと入っていった。

◇◇◇



……奴隷都市グランゼーラには『2つ』の施設がある。

一つは此処都市経済の代名詞

『奴隷市場』。

そこでは毎日闘技場で殺す(あや)為の奴隷や欲望を満たす為の性奴隷が調達される。



……そして今行く場所は此処グランゼーラの心臓部。

これら二つの施設は地下に潜んでおり蜘蛛の巣の如く街中に通路を張り巡らせる。

先程の風呂場もその入り口の一つだ。



……喧騒な音が徐々に近づいてくる。

それは頭上に現れた大きな蓋の外側から聞こえてきている。

当然同じように来ていた仮面達は此処には居らず

居るのはルージュだけ。

「……」

意を決して大きな蓋を外した。

現れたのは白を基調とした研究所の通路だった。

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