ある手記

すずめ

ある告白

思えば彼は、厭世的であったかもしれません

ある日彼は、「僕はね、人間が嫌いなんだ。だからもちろん、人間である自分のことも嫌いさ」と、私に打ち明け話をしてくれました。

私は悲しくなり「では君は、俺のことも嫌いなのだね」と答えました。その時は、人間という雑多なくくりに入れられ、一番の友達と思っていた彼に嫌いと言われ、私は酷く落胆したのです。


彼は、傷ついた顔をしていました。


その顔を見て私は、しまったと思いました。しかし同時に、怒りと悦びがないまぜになった、どろどろとした感情も身の内に渦巻いたのです。

ほとんど無意識に、私の口から心無い言葉があふれ出してきました。思い出したくもない、酷い言葉が。


私の言葉に叩きのめされる彼を見るのは、愉快でした。


人間が嫌いとうそぶきながら、嫌いである人間の発する言葉に打ちのめされる彼は、ただただ滑稽でした。


そして言葉も尽きた頃、彼は私をじっと見つめました。

それは今まで見たこともない顔でした。泣いているような、笑っているような、怒っているような、奇妙な表情。

蛇に睨まれた蛙のように、私は硬直していました。


初めてみる彼の表情は、心底恐ろしかった。しかし同時に、彼の心をこんなにも乱しているのは自分なのだという、昏い悦びが胸中を満たしたのも事実なのです。


私が、何も言わずじっと彼を見つめていると、彼は乱れた髪の隙間から、すがるような視線を私によこしました。


彼は慰めを求めていたのでしょう。

私からの慰めを。


その視線を、その泣きだしそうな瞳を見た私は。


もっともっと、彼をかき乱したいと、醜悪な願いを抱きました。


追い詰め追い詰め。その末に、優しく甘やかしてやりたいと。


私は、どうしてしまったのでしょうか。

私には、嗜虐を好む性質はありません。彼のことは、友人として大事に思っていたのです。


それなのに、この想いは、いったい何なのでしょうか。

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ある手記 すずめ @suzume0406

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