第5話 変わらないもの
学校を出たあと、僕らは駅前のデパートにいた。咲良ちゃんへのプレゼントを買うためだ。お店自体は小さいが、商品がたくさんあってどこを見ても可愛い雑貨ばかりだ。咲良ちゃんの性格や好みは何となく分かるから候補は絞れるが、それでも選びきれない。
「何がいいのかな。確か、心配をかけたお詫びだよね」
「この際、可愛いやつだったら何でもいいや。選択肢が多すぎて選びきれねえ」
真雪も迷っているようだ。
僕の中では選択肢が三つある。リボンがあしらわれたスマートフォンケース、桜柄のハンカチ、桜色のマグカップ――全部買えれば問題ないのだが、やはり高校生のお小遣いでは買えるのは一つだろう。
「真雪、僕はこれが――」
「なあ」
提案をしようとした僕を遮るように、真雪がこっちに振り返った。よく見ると、その手にはサッカーボールをモチーフにしたペン立てがあった。
「俺、これがいいと思うんだけど、どう思う?」
サッカーボールのそれは、女子が持つには違和感を覚える。咲良ちゃんはもっと可愛くて女の子らしいものの方が似合う。彼女に会ったことのある誰もがそう思うだろう。
「どうしてこれがいいの?」
「直感。だってサッカーって面白そうだろ!」
真雪は真っ直ぐとした目で僕に言った。
僕はサッカー部に誘われたときのことを思い出した。
『俺、サッカー好きだし。絶対楽しいと思うんだよ』
『同じスポーツやれば絶対会えるだろ!』
あのときの目と同じだ。
きっとサッカー部の記憶は欠片もないくらい消えているだろう。でも、真雪はどうなっても河北真雪なのだと――なんとなくだけど、そう思った。
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