第5話

「どうしても死なないこの体。年も小学生から取らないし。体の成長も今の状態で止まっちゃってるし。こんなことでいいのかなあ。」


「何贅沢言ってるんでちゅの。死なないことって本当にありがたいことでちゅわ。それにトシを取らなくて、体や顔が醜くなることもないんでちゅのよ。」


「そうぢゃん。動物は必ず死ぬから、子孫を残すために右往左往してるぢゃん。生存競争が激しくなり、生きるために他者を殺すことも起こるじゃん。そんな殺伐とした世界は願い下げぢゃん。」


「それはそうだけど。それにしてもヒマだよなあ。せめて空でも飛べたらなあ。そう言えば、大昔はこの世界でも魔法が使えたとかいう噂を聞いたことがあるけど。」


「それはいったいいつ頃の話でちゅの?そんな都市伝説じゃなかった、田舎伝承になんの情報価値もありまちぇんわ。」


「パコ。そんな子供みたいなことを言うんじゃないぢゃん。魔法が使えたら、こういう遊び心もキケンな行為になるぢゃん。」


木憂華はフラットな胸元から、注射器を取り出した。それを箱子の腕にプスリと刺した。


「痛い!いきなり何するんだよ、キューリー夫人博士。」


「その名前で呼ぶなぢゃん。もう頭にきたぢゃん!チュー。」


木憂華は注射器のピストンをひいて、今日二度目の箱子血液を採った。濃い赤色がシリンダーを満たしていく。

「よ~し、キレイな血液が取れたぢゃん。二番しぼりぢゃん。これをQの体に移住させるぢゃん。」

木憂華は自分の腕に注射器を刺した。


「快~感ぢゃん!」


「あ~。ズルい女でちゅわ!ならばワタクチもこうしてやりたくはないけど、仕方ないからやってあげますでちゅわ。ガブガブ!」


「痛~い!吝奈ちゃん、急に何するんだよ。」


「新鮮なお肉、おいしい、いやせっかくですから味わって差し上げますでちゅわ。」


「イヤイヤ、こっちのフレッシュな血がQの全身に染み渡るぢゃん。ひっく。」


「こら、ふたりとも、あたしの体で遊ぶんじゃないよ。吸血鬼のキューリー夫人博士はあたしの血を飲んじゃだめ!狼族の吝奈ちゃんはあたしの体を食べるの禁止!痛くて涙が出てきたよ。グスン。」


「箱子さんの本気の泣き顔!べ、別にかわいくはありまちぇんし、萌えたくなんてありまちぇんけど。萌へ、萌へ、萌へ~!」


「痛いだけじゃないよ。あたし、スゴく怒ってるんだからね!」


「パコの本気の怒り顔。ひっく。萌ふぇ、萌ふぇ、萌ふぇ~!」

吝奈は再び萌え崩顔となった。木憂華は酔い+萌えのハイブリッドフェイスである。

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