第6話

「今日もいたよ。ホント毎日毎日、何百年もよく飽きないねえ。」

白いロボットが立っていた。宇宙服を着たような格好をしているがスカートが付いており、セーラー服のようでもある。


『チコクカクニンハ、セイトカイノヤクワリ。』


「出た!生徒会ロボットぢゃん!人手不足でこんなところに使われてるなんてかわいそうぢゃん。」


『キョウハ、セーフ。チコクデハアリマセン。ゴーモンウケナクテ、ヨカッタネ。』

再び機械音声が発せられた。


「相変わらず上から目線で鬱陶しいでちゅわ。」

教室への動く歩道を使う三人。


「いつもながらすごく視線を感じるんだけど。」

箱子は白い壁の天井付近に並べられた監視カメラを指差した。


「こんな古いシステムを使わさせられているのが、田舎の分校なんだよね。都市部はスゴいって聞いてるけど、よく知らないんだよね。」


歩道が止まると、自動ドアが開き、眩しい光に覆われた。三人の眼前には広大なスタンド、大画面スクリーンが広がっていた。ドーム球場がそこにあった。但し観客の姿は見つからない。

マウンドには黄金色に輝く机が置いてある。よく見ると、金箔が張り付けられていた。所々剥がれており、年代物であることを窺わせる。

箱子たちは、マウンド先にあるバッターボックス的な位置に座った。いちおう、安っぽいスチール製の机と椅子が置いてある。

マウンドに穴が開いて、そこからひとりの幼女が上がってきた。


涎掛けの付いた青い幼児服に黄色い帽子。その上には赤く大きなリボンがついており、見た目はかなりかわいい。

「おはようさん。今日も儂の夢ハーモニーで死んでもらおうかの。」


「でた!授業前のド演歌が始まるよ!あ~、全然聞きたくない。」

赤リボン幼女の前には、すでにスタンドマイクが用意されている。


♪世の中はあ  思う以上に  辛いものなんだよ しら真剣に 勉学に励んでも 

進学できない  誰も誉めてもくれない  理不尽世界  それを嘆いて

勉強拒否は  即座に憲法違反  だから我について来い  辛い人生  

食わせてやるぜ  ゲロ吐かずに  耐えてみせたら  授業料は  半分にして

おいてやるがのう♪


「いつもながらひどい歌だね。歌唱力は認めるけど。」

 スタンドマイクの後ろに教卓が現れて、赤リボン幼女はそのまま教卓に横たわり、横顔でマイクに声をぶつけた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る