跳び箱を飛ぶ!?
「いーい?真莉ちゃん。まずは五段を跳んでみよう!安心して、あたしが上手くアシストするから!」
「ご、五段!?無理だよ、いきなり五段なんて……まだ四段も跳べてないのに……」
「大丈夫!少し高く感じるくらいが思い切り跳べて、意外と成功したりするし……それに高い方がアシストもしやすいしね」
「あ、アシストって……?」
「真莉ちゃんが踏み込む瞬間にね、軽く力を加えて跳び越えやすくしてあげる。斜め上に飛ばすイメージかな?心配しないで、あたしコントロールは得意だから!」
自信満々に胸を叩く杏梨に、真莉は何故か拭い切れない不安を覚えた。そしてしばらく考えた後、そもそも──と切り出す。
「そもそも、こっちの世界で魔法を使うことは禁止されてるんじゃ……?」
「んーまあ、そうなんだけどね……逆にさ!バレずに魔法で人助けできるってことが証明されれば、こっちの世界で使うことも許されるかも……!ね、いいアイディア!」
「え、それってつまり、事後報告……」
「よし、そうと決まればさっそくやろう!
頑張ろうね、真莉ちゃん!」
「……う、うん」
すっかりやる気満々な杏梨の勢いに押されるように、色々と不安を抱えながらも真莉はしぶしぶ頷いた。
半ば強制的に五段の列に並ばされた真莉。杏梨は休憩と称しながら、真莉の跳ぶ姿が真横から見える位置へと移動した。
真莉の胸がドクドクと脈打つ。順番を待つ足が震えていた。
いくら魔法で援助してくれるとはいえ、やっぱり怖いものは怖い。失敗するイメージがどうしても頭に浮かんだ。
(大丈夫……杏梨ちゃんを信じて、思い切り跳ぼう)
──そしてついに、順番が来た。
杏梨も息を飲んで、遠くから真莉の姿を見つめている。真莉は大きく深呼吸をすると、勢いよく跳び箱に向かって走り出した。
(真莉ちゃん頑張れ!よし、あとはあたしが上手くタイミングを合わせれば……)
杏梨は慎重にタイミングを見計らっていた。しかし、勢いよく走っていた真莉は直前のところで結局怖気づいてしまい……。
急速にスピードダウンすると、踏み台まであと数歩のところで、謎のステップを繰り出してしまった。
下手なスキップのような、何かにつまづいた時のような不規則かつ予測不能な動きに、さすがの杏梨もタイミングを合わせることができず……──。
「ま、真莉ちゃん!!」
焦った杏梨が一瞬力んだことにより、想像以上の力で上空へと投げ飛ばされた真莉の体は、予定よりも遥かに高い位置を綺麗に弧を描きながら飛んでいった──。
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