学校へ行こう!
「──それで?どういうことなのか説明してくれる?」
「え、えーっと……」
杏梨は正座させられたまま、目の前で笑顔で腕を組んでいる彼女の圧に押され、しぶしぶと説明を始めた。
一通り説明を聞き終わると、ようやく腕をほどいた彼女は呆れ顔で溜め息をつく。
「つまり、あなたが無理やりこの子をこっちへ連れてきたのね?」
「む、無理やりじゃないよ!あたしはただ、一緒に来たかっただけで……」
「よく話を聞きもせずに彼女の手を引っ張って、確認も取らずにこっちの世界へ連れてきたのね?違う?」
「……いえ、その通りです……」
杏梨はぶすーっと頬を膨らませた。どうやら拗ねているらしい。その隣で、真莉はオロオロしながら二人を見比べている。
「ああ、自己紹介が遅れたわね。私は
「ど、どうして私の名前……」
「まあ、生徒会に務めてる者として顔と名前くらい一致していて当然よ。特に、あなたは何かと目立つしね」
最後にさらっと付け加えられた言葉を聞いて、真莉はうっ……とショックを受けた。
とてもじゃないが、良い意味には聞こえない。私ってやっぱり目立つんだ……。一人で自己嫌悪に陥っている真莉をよそに、杏梨たちは話を進める。
「にしても、珍しいわね。アンタが早とちりするなんて」
「え?」
「魔法が使えたらなぁ…って呟きを聞いて、こっちの人だと思ったんでしょ?まったく、それだけじゃ魔法が使える人かどうかなんてわからないじゃない」
杏梨は一瞬きょとんとしたあと、あははっと声を上げて笑い出した。
「やだな〜あたしだってそこまでバカじゃないよ〜」
「……え?」
「だってね?こっちで何度か見かけたことがあったから。だからまさか、魔法が使えない子だなんて思わなくて……」
吹雪は渋い顔で眉を潜めた。何かを考えているようで、顎に手を当ててウロウロとその場を歩き回る。
「それ、見間違いじゃないのね?」
「うん、どっからどう見ても真莉ちゃんだったよ!」
「そう……どこで見かけたの?」
「え〜と、学校だったかな?」
吹雪はピタッと足を止めると、再び小さなため息をついた。覚悟を決めたように杏梨を振り返り、ホウキを呼びながら言った。
「行くわよ、学校に」
「でも、真莉ちゃんはどうするの?」
俯いたまま、何やらぶつぶつと呟いて暗いオーラを纏っている真莉の様子を横目でチラッと見ると。
「このまま帰すわけにもいかないし……仕方ないわね。とりあえず連れて行きましょう」
「やった〜!最初から学校には行くつもりだったしね。ね、真莉ちゃん!」
「え?」
名前を呼ばれて、ようやく妄想から現実の世界に帰ってきた真莉は。すでにホウキに跨っている二人を見て、あれ?と首を傾げた。
「どこか、行くの……?」
「学校だよ!真莉ちゃんも一緒に行こ?」
話を一切飲み込めないまま、あれよあれよと言う間に杏梨の後ろに乗せられ背中にしがみつく形になった真莉。
学校って何?とかどうして学校に行くの?とか。何より一番聞きたいのは。
「まさか、このまま飛ぶんじゃ……」
「じゃあいっくよー!」
え、と思う間もなくふわっと体が浮いて。頭が真っ白になった瞬間、体にグンッと負荷が掛かって見る見るうちに空へと上昇した。
遥か遠くなった地面に、気絶寸前の真莉を乗せて。
杏梨のホウキは、ピンクの空の下をすごいスピードで飛び去っていった。
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