第22話 無期限代行

ちろちゃんを案内した場所。

それは、花火大会を見た高台の反対側。


「あれをみて」

指差す方向には、僕や米田さんの母校がある。

「変わった事って何?」

「でも、一般的にはありきたいなんだけどね」

そういって、スマホで連絡する。

「おねがいします」


米田さんは、その母校にいて、合図をしてくれた。

すると、校舎の灯りがともる。


「ちろちゃん、ハッピーバースデー」


「真二くん・・・」

「ごめん、たしいたことできなくて、でも」

「でも?」

僕は続けた。


「この町の、お祭りは予約しておけば、あの学校の灯りで、

好きな人や、友達にメッセージをおくれるんだ」

「メッセージ?」

「クリスマスとかでは、よくあるけどね」

ちろちゃんは、しばらく眺めていた・・・


「ごめんね。何も出来なくて」

「ううん、とても素敵なプレゼントだよ。

ありがとう。私嬉しい・・・」

ちろちゃんは、そうするとハグをしてきた。


普通はお金がかかるが、母校ということで、格安にしてくれた。

ちろちゃんには、内緒にしておこう。


ちろちゃんの、心に残ってくれることを願った。


しばらく、時が止まった気がした。

気のせいではあるまい・・・


次の日、ちろちゃんはじいちゃんと一緒に帰っていた。

ホームで見送った、僕と米田さんに、また会う約束をした。


「佐田くん?」

「何?」

「私、見なおした、君の事」

「そう」

「うん」

言葉はいらなかった。


「ねえ、佐田くん」

「えっ」

「これからも、代行彼女やってあげようか?」

「いつまで?」

しばらく静寂の時が流れた後、米田さんが口にした。


「無期限で、契約をお願いします」

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代行彼女 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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