第9話 巫女さんは、お友達

この町には、大きな神社があり、鳥居は目立つ。

その鳥居を目指して行けば、迷うことなく辿り着ける。


名前は意識していなかったが、八百万の神様を祭っていると聞いて事がある。

まあ、八百万と言われても、子供には関係なく、いい遊び場だった。


夏になるとセミが大合唱して、すぐに捕まえられたが、

大人になると、逆に捕まえられなくなるのはなぜだろう・・・


虫も、相手が子供だと油断するのか?


で、神社についた。

赤い鳥居は、相変わらずでかい。


米田さんと鳥居をくぐる。

「久しぶりだけど、変わってないね」

「うん、ここだけはね」


社務所とかも、昔のままだった


同じくらいの年頃の、巫女さんが境内をそうじしていた。

邪魔にならないように、米田さんとふたりで、見て回ることにした。


「あれ、もしかして、真二くんにまほえちゃん?」

巫女さんが、駆け寄ってきた。

「やっぱり、真二くんにまほえちゃんだ。久しぶりだね。元気だった」

巫女さんは、僕たちのことを知っているようで笑顔で、話かけてくる・・・


記憶をたどる。

米田さんも、同じだった。


そして、ふたりの声がそろった。

「もしかして、ちろちゃん?吉崎ちろちゃん?」

「そう、ちろ、覚えていてくれたんだ」


吉崎ちろ

この神社の娘さんで、ちいさい頃はよく遊んだ。

おてんばだった。


「で、どうして真二くんと、まほえちゃんが一緒なの?」

疑問に思うのは当然だろう。


僕は詳しく話した。


「へえ、すごい。そんな偶然ってあるんだね」

そんな大げさな・・・


「ちろちゃんは、今どうしてるの?」

米田さんが、切り出した。

僕も訊きたかったが訊きにくかった。


「見ての通り巫女さんだよ。まだバイトのようなものだけどね」

ちろちゃんが笑う・・・


そういや、泣いたり怒っているのを見た事がない。

喜怒哀楽の怒と哀が備わっていないようだ。


「それにしても、私が別々に知っている、真二くんと、まほえちゃんが、

高校でクラスメイトになったなんて、神様のお導きかな」

冗談抜きで、その可能性は高い。


「で、ゆっくりしていけるんでしょ?」

ある意味、嫌味にしか聞こえないが、気のせいにしておこう。


「うん、今月いっぱいはいる予定だよ、ねっ佐田くん」

僕に振られても困るが、同意しておいた・・・


「じゃ、子供の時程ではないけど、遊べるね」

「うん、楽しみだ」

ただひとつ訊いておくことがあった。


「ちろちゃん、質問なんだけど?」

「何?体重と3サイズ意外は教えるよ」

「訊きません。この神社の名前は、何かなっと・・・」

「えっ」

ちろちゃんは、不思議な顔をしていた。


「私も知りたい」

米田さんも、疑問だったようだ。


「ふたりとも、私の苗字は?」

「えっと・・あっ・・・」

「そういうこと」


吉崎神社・・・

初めて知った。

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