第3話 いざ出発

米田さんと僕の祖父母の田舎は同じで、ご近所。

遊びに行く日日も、全く同じだった。


「互いに恋人を連れていけ」

そこも同じだった。


そこで、田舎にいる間だけ、カモフラージュ恋人をすることを、

米田さんから提案された。


最近というか、かなり前から、女の子のほうが積極的なんだな。

まっ、楽でいいけど・・・


「でも、すぐにばれるだろう?」

「その時は、恋人ではなく、3人称の意味の彼、彼女にすればいいよ」

確かに・・・


でも、両親に口裏合わせをしてもらう必要があり、仕方なく双方に紹介した・・・

最初は、気不味かったが、互いの両親の、特に父親の趣味が同じとなると、

一瞬で、打ち解けた。


で、もう何十年も前からの、親友のような関係になった。


うちの母も、「娘ができたみたい」と、喜んでいた・・・

なんのこっちゃ


で、肝心の旅行?だが、当然一緒になる・・・

ふたりの田舎は、地元の霜月駅から皐月駅まで、特急きつつきで、3時間程・・・

乗り換えはない。


当日、互いの両親に見送られながら、僕と米田さんは出発した・・・

ホームでは、バンザイをしている。

新婚さんじゃ、あるまいし・・・


で、席なんだが、本来ならマナーとして女性が窓際なんだが、

「私、スピード恐怖症なの」

僕が窓際になった。


でも、この路線はトンネルが多いので、無意味なんだが・・・


駅弁を買おうとしたが、米田さんに止められた。

「お弁当作ってきたから」

そこまで、こらなくても・・・


でも、せっかくなので、ごちそうになった。


かなり、いけた。


「米田さん、君はいいお母さんになる」

心底思った。

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