最終話「けっきょく、キレてしまった」


 新天地を行くかどうかだが、雪穂は反対らしい。


「兄貴はそれでいいの!? 逃げてるだけじゃない!! 私はイヤよ!!」


 と言う意見だ。

 確かに雪穂の言う通りだ。

 だが負けじと俺もこう言い返す。 


「不良漫画の世界じゃないんだ。それに人生は中学終わっても続くんだよ。あんなクソッタレを野放しにするのはイヤだけど、あのクソッタレどものせいでその先の人生を不意にしたくないんだ」


「確かに兄貴は変わった! 強くなったと思う! でもーーそんなの納得出来ない!」


「俺だって本当はやり返したいさ! でもな、下手打てば俺だけの責任じゃないんだ! お前に責任が取れるのか!? もしも俺が犯罪犯したせいで父親が会社クビになって、姉貴が高校中退せざるおえなくなったらどうする!?」


「じゃあどうしてあの不良達は好き勝手にやってるのよ!? おかしいでしょ!!」


「アイツらそう言うの恐く無いんだよ! 例え学校や親にどれだけ迷惑を掛けようがあいつらそう言うのどうでもいいんだ! 馬鹿なんだよ! だからあんな好き放題出来るんだ! 住んでる世界が違うんだよ!!」


「もういい!! お兄ちゃんなんて知らない!!」


 と、こんなやり取りをした。

 俺は間違ってはいない。

 妹も言ってる事は気付いているが納得出来ないのだろう。

 俺も逆の立場なら雪穂と同じ事を言ってる。

 

 一人部屋の中で机に突っ伏しながらこう呟いた。


「俺だって本当は仕返ししてやりてぇよ・・・・・・」


 一人残らず復讐してやりたい。

 だが今のままでは何れ自分自身の精神に限界が来る。

 このままだとタガが外れてしまう。


(・・・・・・高校時代。思ったよ。学校にヒーローがいてくれたらいいのになとかさ) 

  

 学校にヒーローはいない。

 ライダーも戦隊もアメコミヒーローもいない。

 じゃあ自分がなるか?


 最終的には院少送りになるのがオチだ。


 2003年の現在、まだインターネットもそんなに普及していないし、ネットの影響力などもタカが知れている。

 

(せめて上条さんか、キリトさんぐらいの力があればーー)


 あの中学校に上条とキリトもいない。

 

 なれもしない。


 自分なりの全力を尽くしたつもりだった。


 だが結局はこれだ。


 親に迷惑をかけてしまった。


 そんな風にどうするべきか悩んでいた時だった。



 妹が手を出されたのは。


 妹が泣いていた。


 抱き付いてきた。


 相手はーー森川 龍一だった。


ーー兄貴の事を悪く言われて、ついかっとなって。


ーー兄貴の言う通り、あいつら頭おかしいよ。


ーー助けて・・・・・・お兄ちゃん。


 それを知った時、俺はアイツを殺す事を決意した。


 ホームセンターに買いに走り、全財産はたいて俺は防犯グッズとバッグを購入した。


 ああそうだ。


 自分はこれを望んでいたのだ。


 少年院?


 喜んで行ってやろうじゃないか。


 俺は朝早く登校して学校で待機し、森川のクラスで待機した。



 出会い頭に俺はスプレーを吹き掛け、椅子で叩きのめした。

 鎌田も同じだ。


 どいつもこいつも、もう二度と反抗出来なくさせてやる。

 そもそもどうしてこいつらだけが犯罪が許されるのだ?


 これがこいつらの言う男らしさなのか?


 格好いい不良って奴なのか?


 普通に生きてて、真面目に生きてて、馬鹿を見るのがダメなのか?


 上等じゃねえか。


 どいつもこいつもぶっ殺してやる。

 

 幾らでも殴ってこい。

 こっからはもう誰も救われない戦いだ。

 何度やられても何百倍にもやり返す。

 失明させようが骨を折ろうが知ったこっちゃない。


 ・・・・・・


 ・・・・・・・・・・・・


 ・・・・・・・・・・・・・・・



 俺は中学を不登校になり、自宅学習していた。


 教員免許を持った家庭教師と一緒に勉強する生活である。(しかも美人)


 石黒中学校で最後に起こした事件。


 ニュースでも報道されて大惨事になった。


 その傍らで自分は警察やマスコミに事件のリークを行う。

 多少自分達に都合のいいように脚色したが別にいいだろう。

 出るとこ出てやったと言う奴だ。

 その変わり、テレビデビューするハメになったが・・・・・・


 本当はこんな結末を望んではいなかったが、これ以外の結末はありえたのだろうかと思ってしまう。


 ただ自分だけなら良かった。


 だが自分の身内の事になると耐えられなかった。


 自分が憑依したこの谷村 亮太朗の体の影響だろうか?


 結果あの大惨事だが・・・・・・正直スッキリしている。父親も母親も姉も妹も笑顔で送り出してくれた。

 

 まあその前に父親と母親には説教されて母親から平手打ちされたがーーこれは仕方ない。

 どんな理由があれ、罪は罪だからだ。


 最後に担任が訪問してきたり、寄せ書きを持ってきたが、俺は担任に「もう二度とこないでください」と言って寄せ書きを破り捨てて返し、「これが返事です」と返した。

 担任は唖然となった。


 最後に「もしもまた妹に何かあったら殴り込みに行きますんでーー分かりましたね?」と脅迫して置いた。


 すっかりシスコンになってしまったな俺。

 母親には「今回は見逃してあげる」と笑われた。


 また、良いこともあった。


 卓球部は解散の無期限活動停止処分となった。 


 いじめていた連中の一部が何をやらかしたのか警察沙汰になって捕まった。

 大津事件の連中みたいに強力な後ろ盾があるわけでもなく、そのまま院小送りになったらしい。

 

 更に石黒中学校には警察の詳しい調査のメスが入るので余罪も叩けばポンポン出て来るだろう。

 教育委員会やPTAも良い方向へと動いてくれればいいのだが。


 教師も巻き添えで辞職したそうだが「事態を収拾できなかった貴様らが悪い」と言う事で犠牲になってもらった。

 他の中学生、特に中学三年の受験を控えている皆様もいるが恨むなら善人なだけで無能な教師を恨んでくれ。


 俺はただのタイムリーパーであって全知全能じゃないんだ・・・・・・


 これで全ての、あの中学での悪の根は途絶えたワケではないだろうが・・・・・・これで一区切りだ。 

 

 ある意味復讐は完了したと言えるだろう。

 

 憑き物が落ちたように未練はなくなった。


 だがこうしてまだタイムリープは続いている以上、解除も仕方も分からない以上はまた人生をやり直さなくてはならないが、まあ何となるだろう。

  

 さてと、どう生きようかな?

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