第10話「もうキレていいかな?(泣)」
人間と言うのは理不尽な状況に陥ると、どうしてもその原因となった人間を物凄くぶっ殺したくなる生き物である。
これはもう仕方ない。
ぶっちゃけ、世の中には「ああ、こいつ殺した方が世の中のためだな」とか思ってしまう時がある。
日本では許されていないとか話し合いで解決しろとか穏便済ませろとかそう言う話ではない。
どうせそう言う屑は社会に出ても人様に迷惑を掛ける事を考えれば殺しておいた方が世の中のためだ。
石黒中学校にはその手の類いが多い。
まあ中学校てのは普通の小学校から生徒を掻き集めた場所だ。
その選別は平等に行われる。
頭の良し悪しとか人格の良し悪しなどではない。
それにこの頃のガキは精神的に未熟で感情の制御もロクに出来やしない。
多少知恵が回るから性質が悪い。
特に不良なんかは日本社会に甘やかされて育ってきているので、一度殺す寸前まで追い詰めないと改心することはないだろう。
つまり殺した方が手っ取り早いのだがそうもいかないのが辛いところである。
「で? お前、まだ何かようがあるのか?」
龍が○く、とかアウト○イジの影響のせいか、自然に声に凄味を効かせて胸倉を掴んで後ろの壁に叩き付けていた。
まだ朝のHRも始まってないが人はそこそこいる。騒然となっていた。
相手は小柄の少年、上村 健太。
昔はよく遊んだ仲で卓球部のグループであり、複数存在するグループの二つに所属している人間だ。
上村って誰? って思ったら、以前卓球部の阿子 順平と一緒に突っ掛かって来た奴だと思ってくれればいい。(第五話参照)
確か公衆の面前で土下座した筈だ。
周りには同じグループの背の高い奴と上村同じぐらいの背丈の奴がいる。
「お前とはーーまあ正直長い付き合いでさーーまあ俺も悪かったかし、度が過ぎない範囲でなら目を瞑ろうかな~とか思ってたんだけどさ……それ含めて通告だ。これ以上妙な真似するともう手加減はしねえからな」
「な、何養護が偉そうな口叩いてんだ。馬鹿か」
「お前が何を言おうがしっちゃこっちゃねえんだ。別に仲良ししましょうとかそう言うんじゃねえ。ただお互い邪魔しないだけ。不干渉を決め込んでくれればいい。それだけでいいんだよ」
そう言って胸倉を離した。
するとその礼変わりに殴って来た。
「これで大目に見るのは最後だ。忠告はしたからなーー」
上村はきっと俺の言う事など、深くは考えてないだろう。
ただの脊髄反射的に。
格下の相手に説教垂れるのがむかつくので殴り掛かってきたに過ぎない。
俺は席に戻った。
☆
俺にいじめを行うグループは複数存在する。
大きくわけて四つ。
不良グループ。
準不良グループ。
優等生グループ。
部活での塊のグループ。
大体この4つで、明確な線引きはなく複数所属している場合がある。
勉強の出来、不出来はともかくこの四つは漫画に出て来る人物みたいにあんまり賢くない。
何しろ全員教師や授業中の目の前で何かしらの犯行を及ぼすような連中だからだ。
教師が叱っても二日もすればスグに忘れるクソどもだ。
中にはスグに仕返しでトイレに連れ込んでボコボコにする連中もいる。
ルールがあってないようなもんである。
その代わり教師に呼び出されて不良の悪行を黙っておくと気持ち、少しだけ地位が上がる。
まるでヤクザのような社会システムだなおい。
他のイジメはどうなのかは知らないが、こんなんだからイジメはなくならないんだろうな。
☆
教師に呼び出されて様子見で色々と聞かれたので朝での出来事を話しておいた。
上村に殴られた事だ。
そして親にも連絡を入れておいた。
とりあえず、この親へのチクりを何度でも繰り返す。
直接手を下さずに追い落とす。
卑怯かもしれないが相手は群れてるため、ケンカを挑めば百%返り討ちに合う。
それを卑怯と言うような連中が相手なのだ。
それ相応の手段を使わなければならない。
「で? なんのようだ?」
教室から帰ってきた。
じっと視線が俺に注目を浴びる。
どうやら上村の件をチクッたのがバレたのだろう。
上村の取り巻き連中が詰め寄ってくる。
二人人いた背の高い方と上村と同じ体格の奴。
背の高い方が瀬野 一輝
真田 俊平。
いわゆるインテリグループ、準不良グループと言う奴だ。
「テメェなにやってんだ?」
背の高い方が詰め寄ってくる。
「あ? 何か俺悪い事した?」
「先生に何チクってんだよ?」
瀬野が詰め寄ってくる。
「あんまり暴力振るいたくないからな。穏便な手段使わせて貰った」
「マザコンのくせになに格好つけてるんだよテメェ」
同じく十馬が難癖付けてくる。
確かコイツ、バックにヤクザがいるとか言ってたが真偽はどうなんだろうな。
まあ……いたとしても「もしもし、ポリスメン」だけど。
「マザコン言うけど、どのぐらいのレベルがマザコンなんだ?」
「ああ? お前みたいなのがマザコンなんだよ。スグに教師とか親に頼んでーー」
「ああそう。じゃあマザコンでいいや」
十馬がマザコンについて語ろうとしたが正直その倫理で行くと大人は全員マザコンになる。
幾ら根気強く説明しても無駄だろう。
論破してもギャーギャー喚くだけだ。
「おい、待てよ?」
今度は瀬野が肩を掴んでくる。
「まだ何かあるのか?」
「あたりまえじゃねーか」
「ああそう。手短に言えよ。手短にな」
そう言った瞬間。
腹に痛みが走った。
躊躇いなく、腹殴りやがった。
蹲る俺。
そしてもう一発殴ってその場に倒れ伏す。
ああ、最近の俺こんなんばっか。
立ち上がろうとすると追撃が来たらしい。
殴られたのか蹴られたのかも分からない。
どうしてこんな目に。
どうして理不尽な目に合わなければならないんだ。
この時代に戻ってまでこんな目に……
ーーああ、そうだ。キレちまえばいい。
俺の頭の中で何かが囁いた。
そう思って俺はーー手を出そうとしたが体が上手く動かず、手が出ない。
結局やられっぱなしのままトイレに引き摺り込まれて、そのまままた殴り、蹴りの暴行だ。
相手に「これ以上調子のんなよ?」と釘を刺された後。
俺は職員室まで行って意識を失った。
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