第9話「これからの事について」
テーブルを挟んで母親と父親と話し合いが行われた。
いわゆる家族会議と言う奴だ。
「田舎の学校に転校か・・・・・・恐らくあの家に泊まり込む感じなんだろうけど、それを除けば悪くないかもしれないね」
田舎の学校に転校。
それも悪くないと思った。
東北とかは勘弁だが場所は四国である。
問題なのは住む場所が汚いと言う事ぐらいだ。
だが親の言いたい事も分かる。
科学と魔法が交差する異能力バトル物でもないのに上条さんみたいな病院と家を行き来する生活をしているのだ。
普通の神経している親なら転校を考えるのは間違いではない。
それにしてもまだ体の節々が痛い。
「うん。どう思う?」
心配そうに母親が尋ねて来た。
「賛成であり、反対でもあるって感じかな?」
「・・・・・・どう言う事?」
「転校した先でもいじめられないとは限らないんじゃないかな? それに社会に出ればこう言う体験は経験するだろうしね――」
ネットでだがブラック企業、クソ上司の話は散々見てきた。
それにこちとら自分も元社会人である。
同僚同士の仲の良し悪しとかも見てきている。
「それにーー妹の事もなんだかんだでまだ心配だしね。流石に手を出したら俺も対応考えないといけないけど」
「どう言う事それ?」
おそるおそる母親は尋ねる。
「馬鹿はやるんだよ。馬鹿に常識は通用しない」
所詮不良なんて連中は屑の集まりだ。
何をやらかすかは分からない。
だがそうしたら俺にも考えがある。
「ちょっと馬鹿な事を考えていないだろうな?」
父親が慌てたように言う。
「たぶんも何も馬鹿な事を考えてるよ。今回の事件の経緯知ってるよね? 相手が一方的に絡んできて、気にくわないと言う理由だけだ殴って来たんだよ? 勉強だけしていればいいとか無視するなとか言う道理は通用しない。やられたら暴力以外の方法で叩き潰す方法を模索していかないと」
自分で言っておいて何だが、まるで不良達を使って親を脅迫しているみたいだ。
イヤな交渉術である。
「つまり、このまま通い続けるのね」
と、母は真剣な眼差しで見詰めてきた。
「うん。自分は正義の味方でもないし、ましてや漫画の主人公でもない。ただ平穏に暮らすための努力は惜しまないつもりです」
そう返した。
これは本音だ。
復讐心もあるがそれ以外の何かーー使命感の様な物が体を突き動かしている。
それを精確に言葉にするのは難しい。
強いて言えば自己満足だろうか。
「・・・・・・何時の間にか強くなったのね」
「ああ、そうだな。見違えたよ」
母親と父親にそう言われた。
本当は複雑な気持ちで「違うんだよ」と言いたかったが何も言えなかった。
平行世界の未来の息子が憑依してますなんて信じられないだろう。
逆の立場なら精神病院送りだ。
ただ、「そうですか」としか返せなかった。
結局俺は今迄以上に学校と家を頼りにする事を条件に石黒中学校に通い続ける事になった。
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