第7話「家族」

 あの事件からスグ。

 また病院で親と子供が謝罪に来て治療費全額負担して――と言う流れになりました。 


 変わった事は「親がしばらく学校に行かなくていい」と言われました。

 だけど勉強しないわけにも行かないので教科書とか片手に予習復習の謹慎生活です。


 自宅マンションの一室。

 部屋は複数あり、自分は父親との相部屋で過ごしています。

 

「兄貴本当に変わったよね」


 夜になり、中一の妹「谷村 雪穂」に言われました。

 黒髪のツインテールで"ラブライ○のリアルにこっち"みたいな奴です。


「まあ変わらざる終えなかったと言うのが理由の一つかな?」


「そう、そう言うとこ。何て言うか別人みたいになった感じ」


「そう?」


「そうだよ。お姉ちゃんもお母さんもお父さんも言ってた。まだ電波なところあるけど落ち着いた感じみたいだし」


「ああ、そう」


「しかも勉強してるのも変だし。何時もゲームしてるか漫画読んでるかだもん。小説とかも読まなかったよ」


「漫画はともかくラノベの事か?」


 どうやらこの時代、小説とラノベは同じ括りらしい。


「そうだよ。どうせ機嫌取りでやってると思ったけど、そんな気配もないし・・・・・・最近変だよ」


「あ~テレビとかは見るよ? 戦隊とかライダーとか。ライダーの映画見に行きたいな」


 ちなみにこの時代まだプリキュアは存在していない。


「何かそう言う言葉を聞くと兄だって納得出来るのよ」


「そうなのか?」


「そうだよ。まあ姉貴もそう言う部分あるけど、正直マトモになってよかった。あんなのの妹ですなんて恥ずかしいんだから」


「ごめんなさい」


「謝るんならしっかり直しなさい」


「うん」


「ふん・・・・・・ところで一緒にゲームしない?」


「ゲーム?」


 てか中学生の妹とゲームってラノベの世界だけかと思った。


「大乱闘とかマリカーとかよ」


「ああ、アレか」 


 前世の頃は結構やり込んだな。

 正直ゲームは今の時代にタイムリープ直前までやってなかったけど腕はどうなってるんだか。

 かたや対戦ゲーム、かたやレースゲームだ。


「勉強しなくてもいいのか」


「別に少しぐらいはいいでしょ。それに私兄貴と違って学校の成績いいし」


「そうか」


 ちなみに妹はまだ中一である。

 その割には結構シッカリしてるなと思った。

 もしかすると俺と同じ境遇なのかなとか思ったりもした。考え過ぎかもしれないが。

 

(クローゼットにフローリングの床、机以外は前世の兄まんまだな) 


 女の子らしい小物類があるぐらいで前世の部屋とは変わらなかった。


「ちょっと、何かメチャクチャゲーム上手くなってない!?」


「うん? そうか?」


「いや、でも――早い早い!? おかしい!?」


 今はマリカーやっていた。

 ミニターボ連発していてあっと言う間に突き放す。


 続いて版権キャラ同士が戦う大乱闘では――


「なんでそんなに上手いの!?」


「そうか?」


「そうかじゃない!?」


 相手の攻撃を先読みし、緊急回避を駆使して、難なく撃破する。

 ジョジョのダービー弟みたいになった気分だ。

 続いてゲーム機を変えて――そこで自分がもっとも得意とするゲームで戦う事になった。


 前世でもシリーズが5まで出ていて最新作の発表までされていたパーツ組み替え式ロボットアクションゲーム。

 ロボットを操る傭兵になって独自の世界観を駆け巡るゲーム。

 最も得意なゲームの一つだ。


(雪穂は火力変重型か。此方は――)


 この手のゲームで初心者がよくやる、二脚の重火力機体構成だった。

 恐らくチートパーツも搭載しているだろう。


 そこで俺は軽量タンク。

 マシンガン、ブレード、連射式パルスキャノン、急旋回可能なターンブースターと言う構成だった。

 胴体は急加速可能なタイプだ。


「そんな装備で大丈夫なの?」


「大丈夫だ問題ない」 


 と言うある種の定番な返しをする。

 勝ちを確信したのか妹はニヤニヤとやらしい笑みを浮かべる。

 まあ弱そうな機体攻勢だからそう思うのは無理は無い。

 だがこのゲームを真剣にやり込んでいる人間――特に対人戦を経験している人間からすれば対戦重視のガチ機体である事が分かっただろう。


(戦いの舞台はアリーナか――)


 広い空間で障害物もない。

 純粋なプレイヤースキルが物を言うステージで重火力型には不向きな場所だ。

 雪穂はその辺を分かっていないらしい。

 などと思いながら初手急加速を行う。


「え、嘘!?」


 一瞬で横に来て急旋回し、サイドを取る。

 そしてこのゲーム特有のバッタの様に跳ね回る俺。

 マシンガンを撃ちまくり、時にはブレードを突き刺す。

 得意な重火力を活かせずあっと言う間に撃沈した。


「ちょっと!? 今のなに?」


「やっぱ重火力は止めといた方がいい。今みたいになったらスグに勝負がつく」

 

「ま、まぐれよまぐれ! 次よ次!」


 そして二戦目。

 今度は連続パルスキャノンの至近距離で浴びせまくって轟沈させた。

 このゲームの連続パルスキャノンはチート武器の一つで瞬間火力がとても高い。(マシンガンも大概チートだが)

 あっと言う間に相手のライフゲージが削れると言う逆転武器でもある。

 

「なんでそんなに強いのよ!?」

   

「さあ? 格ゲーとかは苦手なんだけどな」


「~~もう一回よ!」


 結局何度も戦い、あの手この手で返り討ちにした。

 垂直発射式ミサイル攻め、ゼロ距離コンテナミサイル、ビット攻め、ハンドガンからのブレード攻めなどもやった。

 

 何時の間にか長い髪の毛が特徴でズボラな印象を持つ姉の「夏美」まで来て「おー凄いねー」などと冷やかす始末だ。


(兄弟仲ここまで仲良くなかったよな俺・・・・・・)


 などと思いながら大乱闘に戻り、妹と姉を倒す。

 姉は強かったが、大会に出て来るような化け物レベルではないのでどうにか勝てた。

 姉はどう思ったのか「本気出しちゃうぞ~」とか言って妹を巻き込んで何度も勝負する事になった。 

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