第3話「登校」

 どうも谷村 亮太朗です。


 以前と違い俺は勉強するにようなった。

 

 この頃のゲームとか漫画を見て過ごすとかもあったが、政治に関心を持ったり、型月のゲームをやったり、様々なサブカル作品に触れたり、イラスト描いたり、小説とかも書いたりしたせいかどうも勉強に身が入るのだ。


 特に社会と歴史、日本史が特に力が入る。

 

 それに一度大人になるって事を経験したせいもあるかもしれない。

 だから頑張ろうと思えた。


 だけど自分にはどうにも出来ない事はある。

 例えば日本を襲う数々の大地震。

 特に東北を襲った大津波など防ぎようがない。


 信じて貰えたらそれはそれでシュタゲの世界に足を踏み込む事になる。

 それにバタフライエフィクトと言う言葉がある。

 前世通りに世界が進むなんて言う保証なんて何処にもないのだ。


 自分はチート持ちの勇者でも魔王でもなんでもないのだから。


 そんな事を思いながら登校中――卓球部の部員である尾川 優也に絡まれた。

 小太りでも大柄でもない肥満体型の不細工な少年で不良グループで一番の格下、パシリ。

 何時も俺を見下していた人物だ。


 家族と問題を抱えていたらしく、何度か家出を繰り返した挙げく、そのまま理由が分からず学校がいなくなった。


 まあ正直何があろうが同情する気はない。

 汚い雑巾を顔面に投げつけられたりもしたからな。


 一番最悪なのはコイツと通学路が九割ぐらい被ってる事だ。

 待ち伏せなんて容易に出来るのだ。


「おい養護。お前チクッただろう」


「そうだけどなにか?」


 朝っぱらから早くも喧嘩腰である。

 俺は無視して傍を通り過ぎたがそのままくっついてくる。


「養護呼ばわりするのは――もう良いとして、これで手打ちにしてくれないかな? 仲良しこよししよってわけじゃない。ただお互い不干渉を決め込む。それだけでいいと思うんだけど?」


 と、大人の対応をする。


「何が手打ちだ養護のクセに。先輩達も怒ってたぞ」


「何だ? 体育館の裏に連れ込んでボッコボコにするとか息巻いてたのか? そりゃいい。先生に頼んで警護でも付けて貰うか。それとも学校サボるか――」


 と、饒舌に語る。

 言ってる事を冗談に思っているのか、「お前学校サボっていいと思ってるのか?」と言ってきた。

 チクルとは思ってもいないようだ。


「ああ。近所の図書館に駆け込むよ。んで館長に話を通せば――まあ暇ぐらいは潰せるだろう」


 俺も引かずに話をドンドン拡大させていく。

 前世の知識であるが、とにかくイジメ問題と言う奴は教育委員会を巻き込むよりも警察とかを巻き込んだ方が話が早い。


「お前本当にそんな事出来ると思ってるのか?」


「出来るよ。まあ、今日は様子見かな? ああ、それと――君も生き方真剣に考えた方が良いと思うよ?」


「養護が何を言ってんだ?」

 

「養護には養護なりに考えってもんがあるんだよ」


「なに格好つけてるんだ? 格好いいと思ってるのか?」


「どうして格好つけてる事になるのかね。これでも自然体の筈なんだが――養護の次はなんて名付けるつもり? ナルシスト? 社会に出てから身嗜みとか言葉使いってのは重要だよ?」


「はあ? 養護がなにいってんだ?」


 俺は苦笑した。

 何か笑えてくる。

 気付いた人もいるかも知れないが尾川は――と言うよりこの時代の中学生の語彙力なんてこんなもんである。元居た2010年代の終わり頃の子供の語彙力はどうなのかは知らないが。


 取り合えず必死になって養護のレッテルを貼って自分を調子に乗ってる変な奴に仕立て挙げたくて必死なのだ。


 自分をいじめている連中の一派の一つがやっている手口だ。


「何笑ってるんだ」


「ああ、ごめんごめん。で、卓球部の部員が怒ってるって? そりゃ恐い。ますます学校にはいけないな。このまま真剣に図書館にでもふけるか――それとも先生に相談するか」


「テメェまたチクるのか?」


「じゃあどうしろと? 男なら漫画みたいに拳一つで解決しろってか? 現実でそんな事やったらすぐ院少送りだよ。不良漫画の世界じゃないんだ。もう少し現実的に物事を考えようよ」


「そんなんだから養護なんだよ!」


「かもね――てか、さっきから君、養護とかチクるしか言わないね。それに朝っぱらから怒ってばっかだ」


「テメェそんなんだとまた森住さんに殴られるぞ」


 森住――森住 龍一。

 少なくとも中学二年生の不良グループは森住中心である。

 そのリーダー格とは何かと縁がある。

 この尾川 純也はこの人間のパシリだ。


 正に虎の威を借る狐その物である。


 なんだかおかしくなる。


「お前何がおかしいんだよ!?」


「いいや、別に。君も随分偉くなったんだなと思って」


「それはお前だろ!」


「うん? 自分はただの生徒Aですけど? それが何か?」


 そして尾川は殴り掛かってきた。

 それもかなり本気でだ。

 登下校の真っ最中。まさか突然殴り掛かるとは思いもしなかった。

 完全に油断したのもあるが自分は武道の経験者ではないのだ。


 俺はむっくりと起き上がりこう言った。


「あー取り合えず救急車呼んでくれない?」


 俺はさらに蹴られた。

 厄日だなおい。

  

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