第16話 雨はやんで

 あんなに激しかった雨は嘘のようにやんでいる。


 ほんとうはどうしたかったのか分からない。


 勝也先生に好きだと言われて頼って欲しいと言われて。

 そして抱きしめたいと言われて。

 寒かった寂しい心があたたかくなった。


 私はどうしてしまったんだろう。


 向かいのアパートに勝也先生はすぐそばにいるというのに遠く感じた。


 自分で遠ざけておいてこんな気持ちになるなんて。


 宙ぶらりんに出来なかった。


 勝也先生の気持ちを弄ぶようなそんなこと出来なかった。

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