第12話 偶然
ちりこは干していた布団を慌てて取り込みにベランダに出た。
「セーフ」
ちょっと濡れてしまったがこれぐらいなら扇風機で乾きそうだ。
「夕方から降るっていってたのに」
まあ大丈夫。
ふと窓を閉めようと視線を上げた時だ。
ちりこはドキッとした。
「あっ」
その視線に気付く。
こんなことって。
「勝也先生」
ちりこの視線の先に。
家の向かいのアパートのベランダに勝也がいた。
勝也の方も気付いていた。
じっとこっちを見ている。
勝也の手から洗濯物が落ちた。
雨に濡れているのにかまわずちりこを見ている。
『でんわしてください』
勝也は電話してとジェスチャーをしながら口を動かした。
聞こえるはずはないけれどちりこに伝わってほしい。
声が聞きたい。
ちりこは電話を慌てて取りに行った。
(電話しても良いの?)
そう心に問いかけながら。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。