第11話 現実問題

 わかってる。


 収入がちゃんと安定していないのに離婚すべきじゃないのは充分にわかっている。


 だけど早く名字変えたい。


 アホ旦那から離れたい。


 もう二度とかかわりたくない。


 あんな男を選んだアンタが悪いと言われるかもしれないけれど、好きだったのだ。


 私を好きだといってくれる慶一郎がこれでも好きだったのだ。


 男を見る目がないかもしれない。

 だけど私のことを他に誰が好きになってくれたんだろうか。


 アホ旦那以外いなかった。


 それにだ。


 子どもたちが二人も生まれてきてくれたことは、本当に嬉しくて。

 子どもたちがいない世界は考えられない。存在を否定するようなことは考えられない。


 

 その時はアホ旦那でも必要だったのだ。 

 必要じゃなくなっただけお互い。


 そうわりきろうとしたけど。


「ぐちゃぐちゃだ。かなしい! くやしい! さびしい! むなしい! むかつく! 腹立つ!」

 ご近所に聞こえたらと気になり控えめに叫んでみた。

「かわいそう」

「辛かったね」


 自分で声に出してなぐさめてみた。


 私はどこに面接に行っても正社員ではなかなか雇ってはもらえないから社員登用有りのパートとかを狙っていくしかない。


 慶一郎には三人目の子供が生まれるのに私との子供ではない。


 無責任だ。

 最低だ。


 まだ離婚もしてないのに。

 

 子供たちに会いたいとも言わない。

 父親として最低じゃんか。


 いくら心でののしっても現実は私はなにも救われない。


 惨めなだけだ。

 

 頭の中もぐちゃぐちゃで。

 考えがまとまらない。


 心もザワザワしている。


 急にザーッと大粒の雨が降ってきた。

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