彼女は恋をしてみたいようです
優木
プロローグ
大学1年の春、僕はサークルの勧誘のために僕に声をかけて来た先輩に心を奪われた。二つ返事で見学に行き、その場で入会した。
1年かけて、かわいい後輩の立場を築き上げながら2年生になり、先輩は誰とも付き合っていないことが分かった。そして、告白した。良い返事がもらえるという確信なんて無かった。むしろ、今は断られたとしても、僕のことを意識してくれるようになればいいとすら思っていた。
しかし、先輩の返事はそのどちらでも無かった。
「私ね、恋をしたことないの。だから君の気持ちは受け止めてあげられない。」
僕の、「初めて声をかけてもらった日から、好きでした。付き合ってください。」という、ありきたりな告白への答えだった。イメトレは数パターンほどしていたのだが、そのどれにも当てはまらない返事に僕は戸惑った。
混乱した僕は思わず、
「じ、じゃあ僕とデートしましょう」
と言ってしまった。
ここまできたら後に引けない
「恋人ごっこの様なことをしたら、恋がどんなものか分かるかもしれないですよね、僕を使ってください。」
どうかうんと言ってくれ。僕は必死の思いで先輩を見つめた。先輩は困ったように笑っている。
そして静かに、
「……じゃあ今度の休み、遊びに行きましょうか」
そう言った。
どうやら、僕は告白の返事を保留にし、すぐに振られる悲劇を回避したようだ。これは一世一代の大勝負だ。デートのお試しでも何でもして、先輩に「付き合うっていいな」と思ってもらうんだ。
僕はそう意気込んでいた。
今日という日を迎えるまでは。
ニヤリと笑って先輩が言う。
「さあ、次回はどこにいこうか?後輩くん?」
これは、先輩と付き合いたい僕の、試行錯誤の記録である。
彼女は恋をしてみたいようです 優木 @miya0930
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。彼女は恋をしてみたいようですの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます