第19話 快適な旅

  日差し、汗、砂ぼこり。

 そして、日差し、汗、砂ぼこり、ときどき、

 かげろう。

 

 快適な冒険者の旅などというものがこの世界

 にあるのであれば、おれは喜んで参加したい。

 

 おれの名は、ベルンハード・ハネル。

 身長180センチ、体重100キロ、年齢は

 23歳、この、玄想旅団に所属して、もう

 3年が経つだろうか。

 

 玄想とは面白い名を付けたものだ。形而上学

 のことを意味するらしい。なんとも哲学的な

 名前を付けたものだが、よくわからない

 ものをいつも追いかけている、という意味では

 間違ってはいないのかもしれない。

 

 一緒に歩くメンバーは6名、皆、黙々と

 歩んでいる。そして、1キロ後方には、

 同じく6名、プラス、駄載獣ヤクが2頭。

 いずれも第2種戦闘配備で移動中だ。

 

  目的地の岩場が見えてきた。

 対象座標から1キロの地点でいったんキャンプ

 だ。後続も追いついてきて、そこが本部と

 なる。消化のいいものを口にして、

 少し休憩する。

 

 斥候の2名は、すでに出発して現地確認に

 向かった。さきほどの6名で、1キロ先の

 現地へ歩きはじめる。第1種戦闘配備なので、

 日差しを避ける笠を本部に置いていく。

 

 それにしても暑い。砂漠地帯なので、

 もう少し乾燥しているかと思っていたが、

 ある程度湿度も高いのかもしれない。

 

 斥候の双子のクノイチが戻ってくる。

 そして、ふたりとも特に何も言わずにすれ違い、

 本部の方角へ走り去った。まあ事前打ち合わせ

 通りという意味なのだろうが、何か気の利いた

 ひとことでも吐けばいいと思う。

 

  目的地の地形は完全に頭に入っている。

 といっても、岩場の裾にそいつが隠れている

 だけだ。今回は何の迷う要素もない。

 

 いた。すでに立ち上がって、あたりを睨み

 まわしている。さっきのクノイチ達が気を

 利かして起こしておいてくれたのだろう。

 

 体長、いや、身長と言ったほうがいいか、

 おそらく4メートル、体重は500キロは

 あるだろうか、青い皮膚、一つ目の巨人の、

 これは戦闘用アンドロイドだ。

 

 木製のこん棒を担いでいるように見えるが、

 おそらく思い金属製だ。現場隊はいつも

 のフォーメーションAで対峙する。

 

 この隊には、戦士、つまり壁役が3人いる。

 人間族のおれと、ジャイアント族がひとり、

 そしてドワーフ族が一人だ。そして、メイン

 の壁役が、そのジャイアント族、アントン・

 カントール。

 

 身長230センチ、体重150キロ、

 でかいが、年齢はひとつ下の22歳。

 

 おっと、身長と体重はおれの予想だ。他人の

 身長と体重を見た目から予想するのはおれの

 趣味だ。

 

 もちろん、本部の持っているデータを見れば、

 正確な値はわかるのだが。

 

  そして、2番目の壁役は、ドワーフ族の

 スヴェン・スペイデル、身長170センチ、

 体重は130キロ、老けて見えるが年齢は

 25歳。

 

 プロの戦士があまり他人の体型を褒めることは

 ほとんどしないが、こいつの体つきは本当に

 やばい。筋肉が厚すぎる。まさに肉団子だ。

 

 2番目の壁役は、前方の相手だけでなく、後衛

 を守ることも気にする。戦闘が始まれば、

 アントンが前線を形成して基軸となり、

 スヴェンは状況を見てポジションを変える。

 

 そして、3番目の戦士のおれは、いわゆる

 オフェンシブタンクだ。前線の維持に加えて、

 後衛の護衛と、隙をみての攻撃も視野に

 入れる。

 

 3人とも、それぞれ身長ほどもある盾を構えて

 いる。盾は、上半分が透明な素材、下半分は

 旅団のカラーである、濃紺にカラーリング

 されている。

 

 アントンが、3メートル近いサスマタを構えて

 巨人と正対する。サスマタでこん棒の動きを

 牽制され、怒りぎみだ。

 

 勢いで向かってこようとするところを、その

 ままバックステップで引く。巨大なこん棒が

 地を叩く。

 

 おそらくこの巨人はかなりのパワーを持って

 いそうだが、この武器がそれに増して

 重いのだろう。当たればもの凄い効果を

 発揮しそうだが、我々には当たりそうに

 ない。

 

  だいたい状況が明確になってきたところで、

 3人のすぐ後ろにいた、紫がかった青に金の

 刺繍の法衣を来たエルフ族の女性が、詠唱

 を始める。

 

「イフリート神よ、我との契約に従い、その

 責務を果たせ、火球召喚!」

 詠唱は、その手に持つ杖デバイスの機能を

 発揮するために必要なわけではなく、

 味方に呪文の使用を伝えるためだ。

 

 前衛の3人が体勢を低くする。エルフ族の

 女性、シャマーラ・トルベツコイが頭上に

 掲げる杖の上で、巨大な火球が発生し、

 巨人の方へゆっくりと進む。

 

 それに合わせておれとドワーフ族のスヴェン

 が、左右から回り込む動きで牽制する。

 

 火球が巨人を捉える。と同時に、巨人の頭部

 あたりでタン! と乾いた衝撃音がして、

 巨人が苦しみ出す。どこかから、巨人の目を

 狙った腐食弾だ。

 

 炎と腐食弾の攻撃で、一つ目を破壊された

 巨人の、両肩口と、左右の腰あたりに、補助の

 瞳が現れて、周囲を確認しだす。

 

 実は今回はこの地域の初戦ということも

 あって、ミッション的にはかなり余裕がある。

 なので、シャマーラの身長と体重についても

 述べておこう。175センチ、75キロ。

 

 エルフ族の女性としては、平均より少し

 低めの身長、そして少し重めの体重だ。

 年齢は30歳。エルフ族は総じて美人揃い

 だが、彼女はそれにも増して美人だ。

 

 一級魔法士、救急看護士、治癒士の資格と、

 攻撃と回復両方を担当する、まさにこの

 現地隊の主力だ。

 

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