第15話 陽気な都市
ユーラシア大陸の北部、シベリア州の
上空に来ている。
指定された地点で降下すると、地表に、
移動住居がちょうど通れるほどの、横穴が
ある。
そこを少し進むと、エレベーターにマウント
され、今度は下方へ進む。数分かけて
到着した場所が、地球上で最初の地底都市だ。
ジムリャと呼ばれるその都市の建設が開始
されたのは、海底都市の開発開始とほぼ
同時期だ。
都市は、1キロ区画単位で補強され、隔離も
可能な構造だ。海底都市と異なるのは、天井の
高さで、300メートルほどもある。
まず感じるのは、気温だ。暑い。摂氏30度
近くあるだろうか。夏だから、というわけでも
なく、地中の温度が高いからだ。
地下2キロから3キロの間にあるこの都市の
外部の地層の温度は、約50度だ。都市自体
が外殻で覆われており、地熱発電なども
使われている。
温度調節などもされているのだろうが、
節約のために夏場はこういった温度なの
だろう。地表は永久凍土で、10度も
ないのだが。
地底都市ジムリャのホテルで2泊する。
移動住居ラウニには、地表に戻ってもらって、
探査を続けてもらう。
ホテルは犬もげっ歯類も大丈夫そうなので、
タピオとウッコを連れてくる。ホテルも
そうだが、街全体が、何か陽気な雰囲気だ。
冬場は、外気温なども利用して、摂氏20
度ぐらいに調節するそうだ。もちろん
家やホテルの中は好きなように温度調節
できる。
地底都市は、海底都市よりも建設が進んで
いて、すでに100キロ四方の広さに
達している。人口も1000万人。
しかし、どんどん増えているそうだ。
アース連邦は、地球外部からの移民は
今のところあまり認めていないが、
海底都市と地底都市への移民はそれほど
難しくない。
自然増加のほうはむしろ積極的に進めており、
最終的には、地表都市をほとんど自然に
戻してしまい、地底都市と海底都市と、
最低限の海上都市、というところを考えて
いるようだ。
海底都市についても、最終的には海底から
さらに下にある地底都市、というかたちを
計画している。
永久凍土というのは、もともと人が住めない
土地とされてきた。しかし、地底を利用する
となると、その地層温度から、地表面が
逆に低温になるような土地のほうが適して
いそうだ。
そういう意味で、このシベリア州の広大な
土地は、今後居住空間としてかなり利用が
広がるかもしれない。
町の風景も、まず目につくのは、色々な
地域のレストランだ。行き交う人々の姿から
も、色々な地域から集まっているのがわかる。
地表に多くの都市が存在し、多くの人が住む
地球と、地底都市にしか人がいない地球、
どちらがいいかと言われると少し困るが、
これまでとまったく異なる地球の姿が出現
しそうなのは確からしい。
ただ、自然に影響の出ない範囲で、観光業は
続けていくらしい。いや、むしろそちらを
主体とするための、地下都市化なのだ。
人々は地底と宇宙に住み、そして時々、
地球の大自然を楽しむ。
現段階でかなり大雑把な見積もりであるが、
地底と海底都市を広げていけば、それだけで
一千億人の人口に戻せるという予測もある。
二日目、タピオとウッコをペットホテル
へ預けて、地下鉄道を利用して総合温泉
サウナ施設へ行ってみる。
ここもヤマト州トヨゴにある施設と遜色ない
数の温泉タイプやサウナをそろえているが、
ついに見つけた。
地下側へ、5階分ほど伸びており、そちらも
利用可能となっていた。中は上階の設備と
異なって薄暗く、地底を思わせる雰囲気に
造られている。
とりあえず、うろうろしながら最下層まで
行ってみる。一番奥の一人用のスチーム
サウナのスペースに寝転んで、これは
これでありかもしれない、そう思った。
何と言うか、人生、いいことばかりでは
ないのだ。そういう時に、ここへ来れば、
意外と心が落ち着くのかもしれない。
ホテルへ戻って、探してみる。
やはりあった、地下にも客室があるのだ。
フロントに頼んで、2泊目の部屋を替えて
もらう。色々な変な間取りの部屋があるが、
一番入り組んでそうなのが空いていたので、
差額を払って泊まってみることにする。
いわゆる、最下層のスイートルームという
やつだ。いたるところに、隠し部屋の
ような小部屋が存在する。這って進んで
いけるところにもある。
小さな子どもと、少し人生に疲れた大人に、
人気があるかもしれない。地底都市は、
地下にその特徴があるようだ。
そのほかにも、アース連邦は、天空都市
なるものを計画しているようだ。隠し
小部屋の奥に収まって、携帯端末で情報
を見る。
基本的には地上の移動は移動住居で行い、
天空都市をその巨大プラットフォームとする。
天空都市は、海上への着水も可能とする。
海上都市とシベリア州の地底都市との
アクセスがあまりよくないので、地底都市
近くの北極海上空に常駐して、最終的
には大気圏突入と離脱が可能な宇宙船での
ランデブーも可能とする。
30年後にテスト運用を開始するという
計画になっているようだ。宇宙開発が進む
につれて、惑星の姿も変わっていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます