第15話 蟻

 幼い頃に、アリの行列を潰したり邪魔したり、アリの巣を埋めてみたり水を流し込んだりなんてことをした事がある人もいるだろう。

 おのれはそういったことよりも、行列を眺める方が好みである。

 ある小学生の趣味は、アリの巣を掘り荒らすこと。

 木の枝等を使って、アリごとぐちゃぐちゃにする。

 何が楽しいのかは、本人に聞かなければわからない。

 今日も誰も居ない公園で、趣味に没頭していた。

 アリも噛んでくることがあるから、素手で触るのは遠慮したい。

 しかし、小学生は指を突っ込んでみた。

 すると痛みが走って指を引っ込めた。

 きっと、噛まれたんだろう。

 小学生はびっくりして、よくわからないから取り敢えず帰って母親にでも話そうかと考えただろう。

 立ち上がって二歩、進んだところでグイと足を引っ張られた。

 黒いアリの大群が、靴を取り囲んでいるのだ。

 小学生は慌ててどうにか逃げようとしたが、それは出来なかった。

 強い力で、足がズルズルと持っていかれる。

 と、小学生がドテンと転けた。

 靴から足がスポッと抜けたのだ。

 小学生はそれを確認しないで、これでもかと走って逃げた。

 母親に靴はどうしたのだと怒られても、怖くていけない。

 たどたどしくも説明して、一緒に取りに行った。

 すると、靴はアリの巣があったところにつま先が穴に突っ込まれている形で縦に立っている。

 母親は嫌がる小学生を連れて、靴を取った。

 靴のつま先には、真っ赤な血がべっとりとついている。

 母親は驚いて靴から手を離して、小学生を抱えて公園の入口まで逃げた。

 親子揃って、似ている。

 母親は警察を呼んで、説明をした。

 警察がそのアリの巣を調べても、何も見つからなかったが、靴についた血を誰のものなのか調べることにした。

 しかし、誰の血でもなかった。

 それから小学生は、大のアリ嫌いになって、そんな趣味は消え失せた。

 あの血が、アリのものだとすれば、指先を噛んだアリだったのかもしれない。

 アリに限らず、巣を荒したりなどの悪さをしたらこういった反撃を食らうことがあるって事だ。

 そうそうないことだが、きっとそれほど小学生が繰り返しこれでもかとやっていたという証拠なんじゃなかろうか。

 甘く見てはいけないのだ。

 小さな者も弱い者も、いつかはソレを超えるだろう。

 そして、恨みでもあれば狙ってソレの為に力を尽くす。

 アリとしても、やっと小学生を止められて良かったんじゃないか?

 もし、貴方がそんなことをやっている、或いは貴方の友人がやっているのなら、気を付けるべきだろう。

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