第10話 作り話と本当の話

 おのれは話すのが大好きでね。

 己の過去をネタに嘘を混ぜ入れて、本当と嘘で出来た話をするのが得意というか好きなんだ。

 現実に居る人間だろうが、誰かが作った二次元の者だろうが、取り敢えず性格やら何やらの設定すら軽く知っていれば、咄嗟とっさにでも話すことは出来る。

 勿論、狙いは相手が笑うこと。

 だから、母親に色々な話をする。

 嘘もないそのまんまの話で十分笑ってくれそうならそうするし、それじゃまだ物足りないと思えば幾らでも話を盛る。

 己が今日あったことを話す時や、過去の話となれば己を主人公にして話せばいい。

 簡単だ。

 もう使う人間はわざわざ作らなくても揃っている。

 何か考えながら話してるわけじゃないことが多い。

 そりゃ、中々笑ってくれそうになかったら流石に頭を使うが、そうじゃない場合は最早もはや無意識に近い。

 昔から嘘は無意識についてしまう性格だから、意識がある今等なら大丈夫だ。

 だが、それだけ話は難しい。

 無意識になれば、もう己が何を言っているのかは後々思い出してからやっと知る。

 話術わじゅつのコツは何だと聞かれた時は、そんなもんないじゃないかと思いながらただ、これだけは言えるかと答えた。

 笑って聞いてくれる人がいることだ、と。

 己の生き甲斐になってしまっている。

 だから、母親がいつか死んでしまったら、己は誰に笑って聞いてもらえばいいんだと不安になるだろう。

 少し前に、そんな友人を失ったのだ。

 笑って聞いてくれる友人を。

 だから己は貴方に笑えもしないだろうつまらない話を聞いてもらおうとしている。

 笑ってくれなくていいから、何か反応が欲しい。

 己は傘を忘れた男の前で話す当時7才の行方不明の男性ではない。

 己ではなく、「僕」と言っていたのだからきっと早々と気付いただろう。

 そうでない場合の人の為に、早々と、ここでそれを明かそう。

 己が誰なのかは貴方が決めることになる。

 今否定した男性だと言い張ってくれても構わない。

 あの話はアレでお仕舞いか、、、と言えばそれはどうだろう。

 己が続きを話したがるまではきっとそのままだろう。

 ここまで話してきた中で、本当の話は勿論混ざっているし、作り話だってある。

 れが本当かは知らない方がいいかもしれないし、知っていた方がいいかもしれない。

 だから、好きなように選んだらいいと思っている。

 嘘と本当は己が決めることではなく、貴方が決めて思い込むのが正解だろう。

 人間というものは、いくら周りが否定しても、自分が思い込んだ方にしか事を進ませない。

 と、いうか、そういうふうにしか事も話も進まない。

 ある意味自分中心に世界は回っているのだ。

 自分が産まれた時から世界は始まっているし、自分が死ねば世界は終わる。

 今まで話してきた話も、生死については己の判断だ。

 貴方からすれば、まだ死んでいなかったかもしれないし、死んでいるかもしれない。

 生死の線を何処で引くのかは、人それぞれなのだから。

 息が止まった瞬間?骨になった頃?それ以上先?

 さぁ、すべてをお好きなように読めばいい。

 解釈も、何もかも。

 己はただ、貴方が最後まで楽しんでくれればいいのですから。

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