第6話 ブランコの

 ある仲良し四人組がいた。

 その内の一人は保健体育の教師として現在も高校でなんとかやっている。

 まぁ、その教師がどうかなったとかじゃない。

 当時まだ教師になる前だったから、多分20になったばかりの四人組は、酒を飲んでいた。

 ただ、酒を飲んで暑くなったからと、涼みに外を散歩しようということになった。

 夜風が優しく、そしてひんやりと静かな夜道を通る。

 そこは、その四人組以外いなかった。

 人気ひとけはないが、見晴らしの良い丘だったから、別に不気味だとかいうことも無かったし、近くにはいつも真っ昼間に子供がワイワイと騒いでいる公園があった。

 その公園に立ち寄った四人組は、喋りながら、ブランコの近くまできた。

 ギィコ、、、ギィコ、、、というブランコをこぐ音が聞こえて、他にも誰かがいたんだと思った。

 そのブランコには、たった一人の少女が座っている。

 夏だから、真っ白いワンピースなのも別に違和感はない。

 だが、とてもその少女は悲しそうなのだ。

 家出したんだろうか?

 しかし、四人組は声をかけようとは思わなかった。

 面倒だと思ったのか、そっとしておいてやろうとか思ったのかは知らない。

 なにせ、おのれはその場にいた四人組の内の一人でもないからだ。

 さっきも言ったように、四人組の内の一人は教師になった。

 その教師が己の高校の、保健体育を教えてくれる担当の教師だったのだから。

 字が汚く、黒板の字は読みづらいが面白い教師だと、己は好いていたが。

 まぁ、そんなことはまたどうでもいい。

 四人組は、アパートに戻ってそのことについて話した。

 悲しそうだった、と言うと四人中三人は同意したが、たった一人は首を傾げた。

 この一人が言うには、とても楽しそうだったと。

 しかも、目が合ってニコリと笑ったんだと言った。

 三人は、どういうことかと悩んだが、もう一度確かめに行けるほどの勇気もなく、怖いのでその日はそのままアパートに泊まらせて貰った。

 翌日、朝早く帰宅したそれぞれだが、忘れられず、心配と不安を抱えたまま、それきり四人組が揃うことは無かった。

 一週間後、三人は1つの知らせを手にする。

 それは、ブランコの少女が笑っていたと言った一人が、公園の前で事故で死んだという知らせだった。

 もしかすると、アレは死ぬという予告のようなモノだったんじゃないか、と今でも教師は言っている。

 だから、あの少女は既に死んでいて、もうすぐ死ぬ仲間に笑顔を見せたのだと。

 さて、本当のところはわからない。

 ただの偶然だったのかもしれない。

 酒のせいで酔って少女の表情を見間違えていても可笑しくないし、少女は生きていたかもしれない。

 人によって物の見え方というのは違うものなんだし、偶然、、、。

 それからその公園について調べて見たものの、そんなところには公園などなかった。

 もしかしたら、もう取り壊された可能性もある。

 だって、そこには現在別のアパートが立っているのだから。

 それか、、、教師らが行った公園は、存在しない何かだったのかもしれない。

 酒を飲んでいる以上は、間違いなどはあっても可笑しくないから、わかりようはない。

 だが、教師にとっては忘れられない恐怖であることには変わりはない。

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