第4話 神と生きる雨女
この神社に住む少女は、真っ白な髪を生まれつき持っていた。
両親がそうだとかでもない。
日本人である。
目の色も薄い色をしている。
色素が薄いのは家族の中でもこの少女たった一人だけ。
こういう人は、二択の人生を歩む。
いじめられっ子になるか、そうじゃないか。
この少女はいじめられっ子だった。
集団で弱い者をあぁだこうだといじめて遊ぶ
少女のおばあちゃんは、とても厳しくて、怖い。
両親は少女を置いてこんな田舎ではなく、都会へと。
だから、少女が助けを求められる相手なんて、いるわけがなかったのだった。
学校の先生?
いやいや、教師というのはいくら良い人であっても下手に動けない。
教師が児童生徒を疑うことは出来ない。
それに、下手にいじめっ子に怒ればその親が騒ぐ可能性だけではなく、いじめが更に酷くなる場合だってあるのだ。
まぁ、その少女がそこまで知っているということはなかったから、少女もある意味馬鹿だったんだろう。
助けて欲しいなら、手段が自殺へと変わるまでは努力をしてみろ、という考えを持つこの
さて、ある日少女はいじめっ子に小さな小屋のようなモノに閉じ込められた。
少女は知っていた。
この小屋のようなモノには、入ってはいけない、とおばあちゃんが言っていたのだ。
この小屋は危険なのだと。
泣きながら出してくれと叫んだ。
しかし、小屋の外では子供たちの笑い声ばかりがこれでもかと鳥よりうるさく鳴いている。
少女にとっては、危険だというのはピンとはきていなかったが、おばあちゃんに怒られるのは嫌だった。
ま、子供は
駄目と言われるだけでは、わからない。
痛い目にあっていたとしても、二度やる馬鹿もいるくらいに。
ふと、少女の後ろから冷たい空気が流れ始めた。
ひたひた、、、と足音がした。
振り返ることは、恐怖からか出来ないで、開かない扉にしがみついていた。
「髪、、、綺麗、、、」
そんな掠れた声がする。
おばあちゃんには、髪は切るな。
伸ばして、大切にしろ。
その髪を引き換えにする為に。
もし、命が危ない時は、髪をあげなさい。といわれていた。
「か、髪!髪ならいいです!」
そう必死に答えると、首元に冷たい感触がした。
少女の意識はそこで一旦途切れた。
目が覚めると、泣きながら走るいじめっ子の背中に乗っていた。
目の前がぼんやりとしており、周りの音は聞こえない。
息が苦しかった。
後ろから、ひたひた、、、と追ってくる何かがいることがわかった。
少女はいじめっ子の背中から降りると、ふらつく足でいじめっ子の手を握って引っ張りながらおばあちゃんの元へ走った。
ついた頃には、おばあちゃんが門の前で怒った顔をして立っていた。
「あんたが最後に入りなさい!」
おばあちゃんの怒鳴り声が、何故か聞こえた。
少女はいじめっ子の背中を両手で押して、言われた通りに門をくぐると、おばあちゃんは少女が門をくぐってから入り、門を閉めた。
そこにはいじめっ子のお母さんが、白い着物をきて、待っていた。
もう、少女にはその人すら見えていなかった。
「今から、あんたの中に水神様を入れるんだよ。入ってはいけないといったのに、入ったんだろう」
怒るおばあちゃんの声だけが、今の少女にとっては全てであった。
いじめっ子のお母さんは、
あの小屋は、水神様を祀った小屋で、誰も近付かないようにしていたのに、入ってしまった。
いじめっ子の話では、少女を閉じ込めてから数分後いきなり、シン、、、と静かになったので、不思議に思って開けてやったら、長い髪が耳下まで短くなった少女が倒れていた。
驚いたいじめっ子は、少女を背負って、見えない何かから逃げていたのだという。
少女は、特別な儀式を終えた後、全て治った。
髪は短いままだが。
鼓動が耳まで這い上がって、やっと息苦しさも何もが消えた。
少女は本当は、産まれてすぐに死んでしまうはずだったらしい。
そんな少女を生かそうと、おばあちゃんが少女に神社の神様にお願いして入って貰ったのだ。
しかし、その神様は水神様にあの瞬間食べられてしまった。
そのせいで、少女は死にそうになっていたのだった。
おばあちゃんは、少女といじめっ子を怒り、皆声を上げて泣いた。
それからというもの、少女は身体に宿った水神様と静かに神社で暮らしている。
もう、いじめっ子はいじめることをやめたし、少女もいじめられることはなくなった。
さて、この水神様だが、遠い昔、この田舎にあった村で村人と仲良くしていたらしい。
人間が大好きな水神様は、村人たちとよくやっていたのだが、雨が降らず困った村人たちが、若い娘を生贄として水神様に捧げた。
酷く悲しみながら、水神様はその娘の髪を切り食べてしまった。
それからというもの、延々と雨は降ったが 、それが原因で村は一度滅んでしまったのだ。
そして何十年後かに新たにこの地に来た者が、この田舎に小さな村を築いたのだとか。
少女は水神様の感情を受け取った。
きっと、悲しかったのだと。
あの時、髪を捧げなければ、水神様は悲しまなかったのかもしれない。
それから
少女は、大人になってから、こう呼ばれるようになった。
「
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