最終回 世界をめぐる少年


ー吸血鬼の世界ー


カトラのいる洋館の前に俺はただ一人、ポツリと立っていた。クロウは連れてきていない。あまり会話を聞かれると恥ずかしいからな…

コンコン。

「カトラ!俺だ、ラルスだ!」

ガチャ…

「ラルス…?わざわざ来てくれたの?」

カトラは俺が来たと知るといなや、即座に飛び込んできた。それほど俺を待っていたってことなんだよな…

「あぁ。それと…あの時の答えを言いに来たぜ。」

「うん…」

「お前と出会ってまだ間もないが、俺の中で何かが変わったんだ。どこの世界にもなかった今までにない感情が…」

「………」

「俺はお前を家族にしようと思う。だから…」






「俺と結婚してくれ。」






「えっ…!?」

まぁそんな反応になるよな。交際も経てないのにいきなり結婚だなんて。

「あっ…ごめん…嫌だったら断ってもいいんだ。ただ、あの時お前が俺のこと「好き」って言ってくれたから…」

「ううん…嬉しい…だって好きな人と一緒にいられるんだもの。」

これはプロポーズ成立でよろしいの…かな?

「もうお前を一人にはさせない。これからは俺達が一緒さ。誓ってみせる。」

「うん!ありがとう…ラルス!私も、誓うから…!」

カトラの手を取り、俺は元のいるべき世界に帰った…


ー2年後ー


「ほれほれ~ドメイクおじさんだぞ~」

「……誰がおじさんだ。」

「かてぇこと言うなって!セリドと遊んでやってくれよ~」

2年後の俺とカトラの間には小さい命がいた。女の子の名前はカトラの父から取って「セリド・マーセル」。産まれてから早くも1歳…言葉も徐々に覚えはじめてる頃だ。

「完全に親バカですね。ラルス様は。」

「でも良いじゃない。あれだけしてくれた方がセリドも良い子に育つから。」

「カトラ様とラルス様のように、優しい子に育ってほしいですね。」

「クロウももうすぐ産まれるんでしょう?お子さん。あまり無理しないでね。」

「はい。授かった命、大事にさせていただきます。」

「お~よちよち~パパはここだぞー♪」

「……ぶっ!」

「そっぽ向かれてるぞ。」

「あえっ!?パパ嫌いになっちゃった!?」

こういう日常を俺は毎日過ごしている。こうやって幸せな生活を送れるのは俺と出会った人達のおかげだろう。みんなに感謝しなきゃな…




「俺も色々と約束しちまったな…なぁクロウ。」

「全く…そうですね…」

「模音、雄子、ミルケ、セン…それに関わってくれた人達…また会いに行こうぜ。」

「私も、同感です。」

「良し!じゃあ準備は出来たか?さぁ、行こう!世界へ!!」

終わり。




ー???ー


「…何だろう…これ?」

赤い原石のようなものを拾った13歳の少女、彼女はまだ知らない。これが歯車を動かす動力であったことを。






―今、一人の少女の歯車が動き出した―






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