第9話 賞金稼ぎの世界


ーゼネル都市区域ー


「何だここ…荒野か?」

「ここはゼネルと呼ばれる小数人口の都市のようです。ありとあらゆる賞金稼ぎの小競り合いが多発しております。」

俺達は今「賞金稼ぎの世界」にいた。今回会う人物はセンと呼ばれる仮面の賞金稼ぎだ。

「都市なのに荒野ってなぁ…っと、早速いるみたいだぜ…」

正面にいる仮面を着け、身の丈ほどの長刀を携えた少女こそが、センだ。

「あんたが「仮面の賞金稼ぎ」とか呼ばれてる奴か?」

「そう…私はその人よ。」

「なら良かった。少し話を…」

サッ…

「へっ?」

あれ?何であいつ俺の後ろにいるの?

ドスッ!!

「うぉ痛てぇ!?」

うなじに鋭い痛みが…!?斬ったのか…今ので…!?

「峰打ちよ。刃の部分だったら確実に死んでたわね。」

おいおいマジかよ…

「そういうのいいから、ちょっとだけ話…」

バッ!!チャキ…

「正直に言って。私の首を取りに来たんでしょ?」

目の前まで接近されて刀を引き抜こうとする彼女は怖すぎた。ある意味クロウ並みに怖いかも…

「ちっ…やるしかないのかよ!クロウ!」

「目標を傷つけないようにお願いしますね。」

「んなこと分かってるから早く!」

シュン…

「こりゃ一筋縄じゃ行かねぇな…」

「そう易々と私の首を取れるなんて思わないで。」

ササッ…

あいつ、神速と同等の足の速度かよ!到底目で追えない訳だ!

カチャ…

「そこか!!」

ガキィン!!

力では無理とみたのかセンはバックで下がり、体制を整えた。

「この剣技…ただ者じゃないな…」

「そりゃあ…12歳から刀振ってるし。」

「それにあの速さ、「神速のセン」とか呼ばれてる理由が分かるぜ。」

「話はそれだけ?フロート!」

ブォン…

彼女が人差し指でクイっとやると、横にあった木々が浮き始める。

「マジかよ…」

『これが彼女自身の能力、「フロート(浮かし)」能力ですね。』

足は神速、剣技は光速、ついでに物浮かすとかこいつ化け物かよ!?

「さぁ、あなたはどう来る?」

「冗談じゃねぇよ…」

スッ…


「もうやめ!!降参する!!」


「……は?」

「これはどう考えても無理!!勝てっこない!!」

流石に相手も驚くだろう。いきなり手を挙げて降参するって言うんだから。

「あなた…賞金稼ぎじゃないの?」

「悪いね。俺達は賞金とやらに興味ないんで。」

ここで彼女もようやく俺達が敵じゃないと認識してくれたか…

「ごめんなさい。ちょっと気が動転して…」

「分かってくれて良かった。俺はラルス。この横にいるのが俺に仕えてるクロウだ。」

「よろしくお願いします。」

「よろしくね。」

ピッ…

『ミスズ!その人達は賞金稼ぎじゃないって言ってるのにー…』

「ごめんね…戦闘に入っちゃって通信が聞こえなかったから。この人達とは和解したわ。もう大丈夫。」

『そうか…ならコンテナの鍵開けとくからね。』

彼女…通信を取っている?協力者がいるのか?

「俺達もそこに行っていいか?今度こそ話がしたいから。」

「オッケーよ。少し狭いけど。」


ーコンテナ倉庫ー


「お帰りミスズ…その人達がさっき戦った人?」

コンテナの中には

「うん。てっきり賞金稼ぎかと思ってしまったから…」

「ミスズ…?」

ミスズってセンのことなのか?

「あぁ…ミスズは私の本名。こっちのサノウからは本名で呼ばれてるの。」

「よろしく、サノウ。んで話ってのは…」


ー数分後ー


「…ってことなんだ。」

「ようは異変を止めに私達の世界に来たってことなんだ…よね?」

「ミスズ。証拠もあるよ。彼らが来たとき、急にレーダーに人の反応があったんだ。これが彼らが別の世界から来たって証拠だよ。」

「ふぅ~これで何とか分かってくれたみたいだな。」

ドンッ!!

「誰だ…?」

何者かが、扉を叩いた。てかコンテナの扉を叩く音が鈍いな…

「俺が出るよ。」

ガチャン。

「どなたで……!?」

目の前にいたのは以前俺達に倒されたはずのドメイクだった。背中には大剣を背負っている。

「お前…何しに来た。」

「お前達に謝罪をしに来た。」

「知り合い…?」

不穏な状況にセンも出てくる。

「まぁな…ちょっとしたってやつでさ。」

とりあえず話を聞かない限り、こいつを中に入れる訳にはいかない。

「話は外で聞く。行くぞクロウ。」

「はい。」


ーコンテナ外ー


「何だ?謝罪という名の決闘なら受けて立つぜ。」

「もうお前達と争う必要はない。俺は知った…マクシムの悪行を…」

「……お前も知ったのか。マクシム…いや、セリアのことを。」

言われてみればこいつもセリアの被害者だ。今言う通り、ドメイクに嘘はないようだった。

「だからお前達に謝罪をしに来た。……すまなかった…俺の身勝手な行動を詫びたい。」

「謝るなら俺じゃなくてクロウに謝れ。」

「……」

「お前はあの時、邪魔というだけでクロウを殴ったよな。なら俺よりもあいつに謝れ。」

ドメイクはクロウの元へ向き、深々と頭を下げた。


「あの時の俺の身勝手な行動、誠にすまなかった!!!」


「…いいですよ。私はもう大丈夫ですから。」

「……感謝する…」

「お前…本当にもう何もしないんだな?」

「あぁ。嘘はない。」

「なら頭を上げろ。お前はもう仲間だ。」

こいつの性格のことだ。嘘はつかないならもう仲間のようなものだ。

「分かった。次からお前達に協力しよう。」

「頼んだぜ。ドメイク・アバロスタ。」




ブゥン…

「ここが…彼らのいる賞金稼ぎの世界ですか。」

茶色く染まった荒野に一人現れた薄く長い金髪の女。

「面白くなってきましたね…」

続く。



次回のロスト・メモリーズは

「レーダーに反応があったんだ!」

「奴がここまで来てる…!?」


「3対1、お前なら余裕だろ?ただこっちには「1人で5人分」の女がいるからな。」

「ええ、分かってますよ。」


「何とも愚かですね。自身が騙されていたというのに。」

「黙れ!お前が今までやっていたことに比べれば俺の愚かさなど屑鉄同然!!」


次回「母なる者」


「カトラを…お前と同じようにはさせねぇよ…」




キャラ解説

・セリア・ラスト

性別 女

年齢 200歳以上

好きなもの 面白いこと


ドメイクに仕えていた武器人間、マクシムの本当の正体。セリド・ヴァンプティムの妻でカトラの実の母でもあるが、本人は母親の自覚は無く、カトラを産んだのも自身の興味本位であるなど残酷で残忍な面を堂々と出している。

100年もの前に壊滅したと思われていた殺人鬼一家「ラスト家」の娘。そのためか、自身の戦闘力も折り紙つきで、二丁のリボルバー銃と自身の「空間の開閉」能力を合わせた戦闘を得意とする。空間を通った銃弾は目標の元へと確実に当たるという強力な効果に加えて、自身も空間移動をすることによってあらゆる場所に移動や回避が出来る。このことから当時の武器人間達の間で囁かれていた異名は「魔弾のセリア」。



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