第7話 吸血鬼の世界

「吸血鬼…?」

「はい。次の世界は「吸血鬼の世界」。会うべき人物は吸血鬼の男です。」

吸血鬼って…あれだよな…何か黒いマント翻してがぶっと血を吸っちゃうやつ…

「吸血鬼って危ないんじゃないのか?」

「世間的にはそういう目で見られていますが、今回の人物は人間に友好的な吸血鬼らしいので。」

ほっ…ならまだ安心出来るな。


ー数十分後ー


「よし…行くぞ!吸血鬼の世界へ!」

ガチャ…



ー吸血鬼の世界ー



たどり着いた先は森の中…何故森?いや玉にはこういうこともあるよな。

「んで?会うべき吸血鬼の名前は?」

「今回は「セリド・ヴァンプティム」という名の人物です。」


ー数十分後ー


俺達は古ぼけた洋館のような場所の前にいた。いかにも何かが出てきそうな雰囲気だ…

「ほんとにこんな場所にいるのかねぇ…」

「いてくれることを信じましょう。」

キィィィ…

この錆びれた部分が軋む音。この洋館のさらに不気味なところを煽り立てる。

コンコン。

「ごめんくださーい!」

出来る限り大声で叫んだ。すると間もなく玄関のドアが開き…

ガチャ…

「どなた…?」

「俺らは怪しい奴じゃない。俺はラルス・マーセル。横にいるのが俺に仕えてるクロウだ。」

出てきたのは俺と同じくらいの年頃の女の子だった。綺麗な黒髪を垂らしている可愛らしい美少女だ。

「「セリド・ヴァンプティム」という男がここにいると聞いて来たんだが…」

「それ…私の父の名よ?」

「父親!?」

あらー…まさかの父親。ならまだ中にいるかな…

「じゃあ、その父親と会わせてくれるか?」

「……いない…」

「いない?」

待てよ…それって…

「私の父は亡くなってる。だからもういない。」

「亡くなってる…!?」

嘘だろ…会うべき人物がもういないならどうすりゃいいんだよ…!

「ひとまず上がって。もう夕暮れだし、今晩泊めてあげるから。」

「あっ…お、お邪魔しまーす…」

「失礼致します。」


ーその夜ー


結局、会うべき人物に会えず手ぶらで帰る訳にもいかないので彼女の言う通り泊めてもらうことにした。彼女…名前はカトラだっけ?セリド・ヴァンプティムの娘ということで自身も吸血鬼ということはさっき教えてもらえたが、肝心な部分をまだ教えてもらってない気がする…まぁそこは明日になって聞けばいいか。





「んっ…?」

何か妙に足の方が重たい。「何か」が乗ってるようだけど…

「あら、起きたのね。」

「うぉえ!?カトラ!お前何して…」

俺の足の上に乗っかってるカトラは何故か不敵な笑みを浮かべていた。

「私ね…あなたが好き。」

「はっ?」

そしていきなりの告白。もう何が何だか分からなくなってきた。

「私、あなたに一目惚れしてしまったの…だから…今夜は一緒に…」

「お、おい…」

「さぁ、夜の営み…一緒にしましょー?」

「おいバカ!!待て待て!!待てって!!やめろ!!」

バダン!!!

「お静かにしていただけますか?」

「「……はい。」」

あんな恐ろしい形相のクロウ初めて見た……


ー数分後ー


「全く落ち着けっての…いきなり夜の営みとか言われてもわかんねぇって。」

「だって好きだからだもん…」

俺を好きなのはいいが、あの行動は大胆すぎる…

「そういや、お前から肝心な部分教えてもらってなかった。父親は何で亡くなったんだ?」

「分からない…外出中に亡くなったらしいんだけど、それ以外は分からなくて…」

「母親は?」

「母は父が亡くなってから行方不明になってて…聞いたところによると、もう事故で母も亡くなってるんだとか…」

両親共に亡くなってるのか…母親に関してはまだ行方不明ってこともあり得るが…

「ごめんな。辛い話させてしまって…」

「大丈夫。今まで誰にも話したことなかったから。」

「じゃあ、俺も話すよ。俺とクロウはこの世界の人間じゃないんだ。こことは次元が違う別世界の住人でな。」

「もしかして、何か目的があってこの世界に?」

「そうだ。俺達は様々な世界をまわって後々に起こる異変を止めなくちゃいけない。異変ってのは俺達の世界に住む魔獣が他の世界で暴れまわることを言うんだ。」

元からこのことを隠す気は無かったが、言えるタイミングが無かった。

「話してくれてありがとう。」

「いや、こちらこそ。てか俺のどこに惚れたんだよ…」

「顔と性格。」

単純ッ!!物凄く単純すぎる!!

「それだけじゃない…私、家族が欲しかった。両親もいないこの洋館でずっと何年もひとりぼっち。ラルス達が来た時ね…私凄い嬉しかった。迎えが来てくれたんだって…」

この言葉を聞いた時、俺の中で何かが起きた。俺の心が「カトラを家族にしたい」って叫びそうになっている…

「確かにひとりぼっちは嫌だよなー」

「ふふ…話相手になってくれてありがとうね。もう夜も遅いから、お休み。」

「あぁ、お休み。」

何だか決心がついたような気がする。もしかして…俺もカトラに惚れたのかな…

続く。



次回のロスト・メモリーズは

「この世界、異変そのものがないようですね。」

「魔獣もお休みかよ。」


「事が終わったらまた会いに来る。返事はその時まで待っててくれ。」

「私はいつでも待ってる。いつでもここで…」


「あっ、最後に行方不明のお前の母親…特徴とかあったら教えてくれ。もし見つけたら伝えに行く。」

「確か母は…」


次回「魔弾」


「まさかな…あいつが…」





追加キャラ紹介

・カトラ・ヴァンプティム

性別 女

年齢 100歳以上

好きなもの 甘いもの


本編オリジナルワールド「吸血鬼の世界」の住人。ラルス達が本来会う存在だったセリド・ヴァンプティムの娘で自身もれっきとした吸血鬼だが、血を吸うことはない。両親がいない中ずっとひとりぼっちで古ぼけた洋館に住んでおり、セリドに会おうとしたラルス達と出会い、自身はラルスに一目惚れ。ラルスに振り向いてもらおうとアプローチをかけようとした。ラルス自身も彼女のことは嫌っていないようである。




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