第5話 天使と悪魔と人間の世界

コンコン…

「入りますよ。ラルス様。」

ガチャ…

「朝食の準備が出来てます。そろそろ起きてください。」

「…お前、今日は飯抜いた方が良いぞ…」

「何故です?」

眠たい目を擦りながらクロウに頼んだ。

「今回会うべき人物は大食い天使の「ミルケ・ザナドゥ」だ…かなりの量を食うらしいから、付いていくために今日1日飯抜く気持ちで行かないとキツいぞ。」

「あぁ…確かそうでしたね。ですが、せめて朝食だけでも…」

「もしかしてお前朝食食べたのか?」

「私はもう済ませましたが。」

マジか…今回の世界のこと事前に確認しとけよ…

「…腹膨れて破裂してもしらねぇぞ。」

「それはいいので朝食だけでも取ってください。」


ー数時間後ー


結局食っちまった…後のこと考えるとほんとに胃がもたれそうだ…

「朝飯食ったばっかだけど行けるか?」

「準備は万端です。」

「よし、行くぞ!天使と悪魔と人間の世界へ!!」

ガチャ…



ー天使と悪魔と人間の世界ー



「うげっ、また日本か。」

「日本は日本でも別世界なのですから。」

ここはどうやら東京の池袋ってとこらしいな。都市なだけあって確かに様々な飲食店が連なり賑わっている。

「この世界では人間と天使と悪魔が共存しているようです。」

「共存ねぇ…面白いな。」

こういった世界もまた珍しい。俺は今まで見たことがないな。

「にしても参ったな…飲食店が多すぎてどこにいるのか分からないぞ…」

これは前回の雄子探す時以上に面倒なものになりそうだな。

「事前の調べによりますと、特徴は長い金髪でラーメンなどのどんぶり系当の料理が好きなようです。」

「おいおい、いくらなんでもそれだけじゃ…」

「無いよりマシです。」

「……はい。」

仕方ない、丼もの系の飲食店まわるしかないか。


ー数時間後ー


「いた!あの人じゃないのか?」

数店舗まわって見つけた金髪の女性。確かにラーメン屋でラーメンを食べている!

「間違いありません。彼女がミルケ・ザナドゥです。」

「分かった。入るぞ。」

カランカラン…

「二名で。」

さらっと店に入り、ミルケと思われる人物の横に座る。

「クロウ…ほんとにこの人なんだよな?人違いだったらただの迷惑だぞ。」

「さっきも言った通りです。私の目は間違っていません。」

でもクロウがそこまで言うんだから、きっとこの人はミルケで間違いないんだよな…俺は意を決して名を呼んでみる。

「ミルケ・ザナドゥ…」

「んっ…?」

反応した!やっぱり間違いなかった!つーか名前呼ぶの怖かったな…

「ミルケ・ザナドゥなのか?」

「えっ…うん。私がそうだけど…」

「あんたが大食い天使のミルケってことで間違いないか?」

「ちょっと待って…何で私が天使だってこと知ってるの?」

「それについてはこの店を出てから話す。あっ、俺はラルス。俺の横にいるのはクロウってやつだ。」

ここでさりげなく自己紹介を兼ねる。

「よろしくお願いします。」

「よ、よろしく。」

とは言うものの何食おう…ひとまず餃子でも頼むか。クロウの分も。

「私は結構です。」

「お前…一人だけ飯地獄から逃げる気か?」

「一つのものを二人で分ければ良いのでは?そうすれば腹の収まりも減りますよ。」

頭良いな!それなら腹に余分に溜まらないし、何せ安く済む。

「最高の案、ありがとよ。あっ、餃子1つで。」


ー数分後ー


注文した餃子が来た。個数は6個…ちょうど3個ずつ分けられる。

「いただきます。」

割り箸で餃子を1つ掴み、小皿の醤油を少々つけて食べる…

サクッ…

外の皮がサクサクしていて美味い。中の具もかじった瞬間にじゅわっと中から出てきて最高に美味い…!

「美味しいですね。今度、家でも再現してみましょう。」

クロウのことだから恐らく完全に再現はしてくれるだろうな。あいつは料理に関してはかなり細かい目で見るし。

「1つのもの分け合うって…もしかして二人はカップル…」

「「いえ違います。」」

二人同時に即答とか…何でここだけクロウとタイミングバッチリなんだ…





かくして俺達一行は今いた店を出た。これから彼女にさっきのことを話すところだ。

「何であんたの名前知っててしかも天使だってことも知ってるかというのは、俺達が別の世界から来た人間ということだからなんだ。」

「別の…世界?」

「別の世界ってのはもはや次元が違う意味でな。俺達はもうじきこの世界で起こる異変を止めに来たんだ。」

「凄い!救世主なんだね、ラルスくんは。」

救世主ってのとは何か違う気がするが…

「とにかく、この話は本当なんだ。」

「私は信じるよ。ラルスくん達のこと。」

「ありがとう。」

よし、ひとまずは完了だな。問題はこの後…


ー数時間後ー


俺達はハンバーガーショップにいた。ミルケに付いていくうちにやはり腹が膨れてくる…そんなこともお気に召さずガツガツと食べている彼女は何だか幸せそうだった。

「ほんと良く食べるな…」

「食べたい時に食べる!それが私の幸せ!」

分かるなぁその気持ち。彼女はきっと食べている時こそが本来の自分って分かってるからこういうことが言えるんだろうな。

「ラルス様。」

「何だ?」

「この世界、魔獣の気配がありません。」

「気配を感じないって?」

俺も薄々感じてはいたが、クロウの言う通り魔獣の気配を感じない…魔獣が出ないのに異変が起こるって「魔獣以外の何か」近づいてる証拠だ。

「いやそんな…まさか…」

「私もあまり言いたくありませんが、恐らく「彼」でしょう。」

ならちょうどいい…強くなった俺達の実力を見せてやる!

「てか何でミルケはここに来たんだ?」

「友達と遊びに来たんだけど、連絡が遅くてね~…」

天使の友人って一体どんな人なんだろ…

ピピピ…

「おっ、噂をすればなんとやら。」

「連絡が来たのか?」

「うん!これ食べたら行くよー!」

天使の友人…ちょっと会ってみたい気もある…

続く。



次回のロスト・メモリーズは

「友人って悪魔だった……」

「どうしたのミルケ、この子達…」


「ちょ!ミルケ今の見た!?クロウちゃんが武器に…」

「あっ、言い忘れてた。こいつ武器人間ってやつでな。」


「今日こそがお前の命日となる!!」

「まだ死ぬのは御免だぜ!!」


次回「再戦の時」


「バカか。強くなったのは俺だけじゃねぇ…」

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