第3話 オタク少女の世界
ドサッ
「何だ…この本の山は…」
リビングの長机に置かれた本の山。恐らく20冊以上はあるだろうと思われる。というかこれ一度に全部持ってこれたな…クロウ…
「次の世界に向けての予習です。」
赤い眼鏡をサッとかけ、読み始めるクロウ。本の題名を見ると「仮面ライダー超全集」とかなんだか書かれている。
「これ全部親父の本棚から取ってきたのか?」
「はい。旦那様が残したものを少しお借りしております。」
俺の親父、ジンク・マーセルは世界をまわっていたのもそうだが、かなりの読書家だった。俺の家に残されてる本棚は図書館並の本の数があり、恐らく親父が現地で購入したのであろうあらゆる世界の本が残されていた。
「かめん…らいだー?…」
本の正面に書かれてるいかにもヒーローのような顔が載っている。
「調べによると1971年に放送されているヒーロー番組のようです。これ以降も様々なシリーズが現在までも続いています。」
「ご長寿のヒーロー番組ってやつか。でも何でこの仮面ライダーというやつが次の世界に関係しているんだ?」
「次の世界、どうやら私達が会うべき人物はこのヒーロー番組のオタクということらしいので我々も話を合わせるために予習しておいた方が良いかと。」
オタク…あぁそういえば次の世界は「オタク少女の世界」だったかな…会うべき人物の名は確か、「英前雄子」。
「ようはこれを片っ端から読んで備えろっていう天のお告げか。うっし!やってやらぁ!」
ー数時間後ー
「……飽きた。」
「まだ5時間しか経っていませんよ。本はまだまだありますので読んでください。」
「5時間「しか」ってなんだよ!!大体親父何冊買ってんだ!!親父も余程のファンか!?」
ー数時間後ー
「…俺、今日飯いらねぇや。」
「ダメです。食事はしっかり取らないと体が良くなりませんよ。」
「文字で腹一杯なんだよ、こちとら。つーか今日の晩飯何?」
「今日の夕食はハンバーグドリアにしようと思っていたのですが。ラルス様がこのような状態では…」
「あー分かった!分かった!食います!俺の腹ペコペコです!」
そんなこんなで今日という日は終わった。……意外とハンバーグドリアいけた。
ー翌日ー
身支度を整え、世界への扉を開こうとする。昨日あんだけ読んだのに内容が全く頭に入ってねぇ…まぁクロウが何とかしてくれるだろう…
「さぁ、行くぞ。「オタク少女の世界」へ!!」
シュゥゥゥン…
ーオタク少女の世界ー
「ここ、日本のどこだ?」
「どうやらここは日本の秋葉原のようです。恐らく彼女は仮面ライダーなどの中古品がある店にいることでしょう。」
「じゃあ片っ端から入って探すか。」
何だかここら辺、クロウと同じような容姿の女性がいっぱいだな。クロウもその風景に溶け込んじゃってるよ…
ー数十分後ー
ポーン…
エレベーターを降り、目の前の中古品店に入る。
「どんだけまわった?数十店舗は行ってると思うんだが。」
「うーん…これもいいなー持ってないし…でもアギトも…」
いた!!やっと見つけた!!間違いない、彼女が英前雄子だ!!
「それ、凄いやつなの?」
何気ない感じで会話に入る。これで話が合えば…
「えーと…あなた誰?」
「あっ…いいやその…」
「そのベルト、「仮面ライダーアギト」放映2001年当時の「DXオルタリング」ですね。これは私も欲しかったのですよ。」
ナイスだクロウ!やっぱこういう時頼りになるぜ!
「まさか、あなたもオタク!?やっぱりアキバは私と同じような人がいるから行って正解だね!」
「ええ、私も会えて光栄です。」
その時、クロウが少し微笑んだ。何だろう…今までクロウの笑顔なんて一度も見たことが無かったから新鮮だけど何かクロウらしくないというか…
「私、英前雄子!雄子って呼んで!」
「俺はラルス・マーセル。んでこっちのオタクが俺に仕えてるクロウだ。」
俺が言ったら怪しまれるんじゃないかって思ったけどクロウのおかげで怪しまれずに済んだ。
「そのオルタリング、私達に譲ってくれませんか?」
「いいよ!これも何かの縁だからね!」
そう言うと雄子は袋詰めにされたベルトをクロウに差し出した。
「ありがとうございます。」
ー数分後ー
「なぁ…それ買ってどうすんだよ…」
「家の装飾として飾ったらどうですか。きっと映えますよ。」
「おもちゃのベルトを家の装飾として使うのお前くらいだぞ…それより…」
「何でしょう。」
俺はクロウの耳元でひそひそと話し始める。
「彼女に俺達のこと話すか?別の世界から来たって。」
「いずれにせよ分かってしまうことなので話しておいた方が良いのでは?」
「分かった。」
即決で決まり、雄子の元へ行き、話を切り出す。
「雄子、ちょっと話があって…人気のない路地裏に来てくれないか?」
「どうしたの?」
ー路地裏ー
「会って早々に悪いんだが…俺達は別の世界から来た人間なんだ。別っていうのはもはや次元が違う意味でのね。」
「そ、それって…」
「あぁ…騙していてすまない。俺達はいずれこの世界で起こる「異変」を止めるためにやってきた。仮面ライダーのことを良く知ってるのは君と話を合わせるために知ったことなんだ。」
「私からも深くお詫び申し上げます。私はオタクではありません。誠に失礼いたしました。」
許してもらえるかは分からない。ただこの情況じゃ許してもらえそうにないな…
「ラルスくん、クロウちゃん…」
「うん…」
「それって凄く燃えない!?」
………………は?
続く。
次回のロスト・メモリーズは
「別世界から来たって!そういうシンプルな設定とか私好き!」
「これ話通じてる?」
「私ね…いつか人々を助けられるような人になりたいなって…」
「雄子様ならなれます。きっと…」
「君は下がって!!」
「でもそれじゃ…ラルスくんが…!」
次回「内なる英雄」
「見つけたぞ…異変を起こす者め!!」
「お前…誰だ……!?」
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