第2話 絶望を振り切れ

さぁて、まずはどいつから片付けようかな。

「グルウゥ…ブワァウ!!!」

「お、あっちから来てくれるとは。」

こりゃ都合がいい。あっちから来てくれるとその反動でやりやすいからな。

「せいっ!!」

ザシュ!

「ウ………グガァ…」

長刀の一振りで終わるなんて意外と呆気ない。

「なぁ、こいつら本当に「悪魔」とか呼ばれてる奴なのか?ガセじゃねぇの?」

『口を開く暇があるなら模音様の加勢をして下さい。』

「はいはい…っと。」

『「はい」は一回です。』

「……はい。」

残りのリゾネーターは3体くらいか。ほとんどは桐山とアルテミスが片付けてるようだしな。

「…!?まだ市民が…早く逃げて下さい!後はこちらに任せて!!」

ん?もしかして俺に言ってる?

「俺は普通の市民じゃない!お前を助けに来たんだ!」

「えっ!?」

あの感じじゃ分かってないな…とりあえず片っぱしから倒して認めてもらうしかないか。

「よっ!はっ!」

ザシュ!ジャキン!

「グォ……」

「凄い…ホープミュード無しでリゾネーターを!?」

これでようやく認めてもらえるか。

「残りの一体は任せて!アルテミス!」

刀を上に投げ、クロウを元の人間の姿に戻す。後は彼女に任せていいみたいだ。

コォォォォ……

あの青いロボットにエネルギーが集中してる?

「行くよ!フォトンスラッシュ!!」

バカァァァァン!!!

「リゾネーターが…跡形も無く塵に…」

「何て威力だ…言葉が出ないぞ。」

シュゥゥゥン…

「ふぅー…」

一時の戦闘が終わり、さっきまで騒がしかった街が静かになる。

「凄いな。そのロボット。」

「ところで、あなた達は一体…」

「ここではちょっとな…場所を移そう。」


ー街の公園ー


「単刀直入に言う。俺達はこの世界の人間じゃなく、別の世界から来た人間なんだ。」

「別の世界って…それってどういうこと?」

「別の世界っていうのは外国とかの次元じゃない。もはや世界そのものが違う…と言った方がいいかな?」

これ毎回説明するの難しいんだが…

「別の世界…じゃあ何で私の世界に…?」

「俺達は様々な世界をめぐり、異変を止めるのが使命。今この世界にいるのはもうじき来る異変を止めるためなんだ。」

「何となくだけど分かった…ところであなたの名前は?」

「俺はラルス。ラルス・マーセルだ。んでこっちにいるのが俺に仕えてるクロウ。」

「はじめまして、模音様。」

「は、はじめまして…」

やっぱクロウが出ると相手も堅苦しくなるのは気のせいか?

「ん?でもさっきの戦闘の時クロウさんはいなかったよね?」

「あぁ。こいつは武器人間という種族でな。人間でもあるが「武器」でもあるというちょっと特殊な奴なんだよ。さっきいなかったのは俺が武器になったクロウを使ってたからだ。」

シュン…

俺は模音の目の前でクロウを長刀にして、元の人間に戻してみせた。やはり彼女は信じられないという顔をしている…まぁ当たり前っちゃあ当たり前か。

「じゃあ、私も教えなきゃね。アルテミス!」

シュゥゥゥン…

携帯型の端末から出された青いロボットが今度は俺達の目の前に現れる。身長はおおよそ大人の男性くらいで見るからに小さい男の子なら飛びつきそうな見た目だ。

「そのロボット、お前のなのか?」

「うん!この子はアルテミスっていうんだ!」

アルテミスという名のロボットは依然として持ち主の模音の方を向いている。喋ることはなかれど、どこか感情を持っているように見えた。そんな時―

ビービー!!ビービー!!

「市街地でリゾネーター出現!?しかも今度は未確認の飛行物体も!?」

「ようやく現れたな。魔獣めが。」

「そのようでございますね。」

「その飛行物体、俺達が狙っている「異変」のやつかもしれない!俺達も連れてってくれ!」

「分かった!」


ー市街地ー


よし…市民は既に避難済みか。これなら思いっきり戦える。

「ギュケェーーー!!!」

「ほれ、やっぱり魔獣だ。しかもタカ型魔獣の「イルグ」とはな。」

地上にいる複数のリゾネーターに混じって上空には一際でかく赤い目を持つタカ型の魔獣、イルグが俺達を見つめていた。

「何なの…一体あれは…」

「上にいる鳥は俺達に任せろ。お前は地上のリゾネーターを頼む!」

「了解!オープンガントレット・バトルスタート!!」

シュゥゥゥン…バシュ!!

アルテミスが出たところでクロウも弓の形状に変わる。

「射程…いけるか?」

『あの位置からなら問題ありません。』

「オッケー。行くぞ!」

カシュッ!

「キュォォー!!」

おでこにピンポイントで矢が刺さった。だが矢1本だけではイルグは落とせない。

「キュェーーー!!!」

ブゥオ!!

「ぐっ!」

翼で強風を起こされて体が吹き飛びそうになる…

「キュォォ!!」

「うぉっ!?」

低空飛行をしながら足の鋭い爪で引っ掻こうとする。あれまともに食らったらズタボロどころの話じゃない!

「クロウ!手裏剣頼む!」

『了解しました。』

シュン…

クロウが大型の手裏剣の形状になる。この手裏剣は投合武器としても使える他、デカイから盾としても使える優れものだ。

「うぉらぁ!!」

ドゴォ!

「ギ…キ…」

見事手裏剣がイルグの腹に命中し、体が大幅に弱まる。後、一発与えればこっちの勝ちになる!

「ラルスくん!」

「模音!そっちは片付いたのか?」

「オッケーだよ!リゾネーターはもういない!」

そっちが片付いたなら後はこのデカイ鳥をどうにかしないとな。

「アルテミス!」

シュゴォォォ…!

「トドメ、打つぞ。」

アルテミスもやる気みたいだな…

「俺が奴に手裏剣を投げる。その後にアルテミスがトドメを!」

「分かった!」

バチバチバチ…!

青いオーラを纏ってアルテミスがチャージを始める。今の内に…

「そりゃ!!」

バゴッ!!

「グォ…」

「今だ!!行け!!」

「フォトン……」

ビュオオオオ!!

「スラーーーーッシュ!!!」

バチン!!

「おしっ!!」

強力な一振りを食らったイルグの体は真っ二つに割れ、そのまま塵となり朽ちていった。この世界の異変は…止められたんだ…





「ごめん…俺達の事情に巻き込ませてしまって。」

「大丈夫!少ししかいられなかったけど…一緒に戦えて、良かった。ラルスくんがいなかったら勝てなかっただろうし…」

確かに…彼女一人だけでは魔獣は確実に倒せなかっただろう。でも俺達も模音がいなかったらリゾネーターに勝てなかった。お互いに助けられたもんだな…

「ラルスくんはこれからどうするの?また別の世界に行くの?」

「ああ。これからも別の世界で異変は起こるだろうし、一旦俺達は自分達の世界に帰るよ。」

「そうなんだ…でも気が向いたらまたこの世界に来てね!」

「分かってる。また来るよ。」



「なーんかこのあと凄いことが起こりそうな予感がするぜ。」

「そうでしょうか。」

「まっ、悪魔でも俺の勘だけどな。そういや今日の晩飯なんだ?」

「今日は昨日から煮込んで寝かせてあるチキンカレーです。」

「お、今日の俺の運最高じゃねぇか!」

異変を止めると俺はいつもの何気ない日常に戻る。疲れを養ってはまた世界をまわって異変を止めに行く。このサイクルが地味に俺は好きだ。さて次の世界はどこかな?


「やっぱ仮面ライダー最高だね!!」


続く。



次回のロスト・メモリーズは

「かめん…らいだー…?」

「1971年からテレビ放送されているヒーロー番組だそうです。」


「私、英前雄子!雄子って呼んで!」

「ど、どうも…」


「君、他の世界から来たって何だかディケイドみたいだね!」

「ディケイド!?誰だそりゃ!?」


次回「オタク少女の世界」


「ヒーローってのは心の内側にいるのか?」


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