第3話 そして、粗大ゴミ処分場にて。

 「いやあ、間違えて捨てたって、後から慌てて取り返しに来る人、案外多いんですよね」


ゴミ処理場の管理人にこんな皮肉を言われながら、イチジョウさんとともにゴミの山を漁ること5時間。


「あ、あった!」


日が傾いて処分場もそろそろ閉めようかという頃、ようやくあの古めかしい掃除機を発見したのだった。


 そして、掃除機とともに僕の新居に戻ると、イチジョウさんは、いきなり掃除機からコードを引っ張り出し、コンセントにつないだ。

そして掃除婦ならではの堂々とした腰つきで掃除機の柄を握るとやおらスイッチを入れた。


ごおおおん!


手を拱いて一部始終をオロオロと眺めている僕が困惑している脇で、イチジョウさんは僕の部屋を入念に掃除してゆく。

そして掃除機の音に負けないくらい大声を張り上げていった。


「アシヤさん、昨日悪夢にうなされてよく眠れなかったのでしょう!? それ、多分悪霊の仕業!」


「えっ? 悪霊?」


「そう。私、この間、廊下を掃除をしている時に聞いちゃったのよ〜。

アシヤさんが格安物件の部屋に引っ越すってウワサ。

それでおせっかいとは思ったんだけど、不動産屋さんに行ってこの部屋のこと調べてみたら案の定!」


イチジョウさんは部屋の隅々まで掃除をし終えるとようやく掃除機のスイッチを切った。

再び戻ってきた静寂の中、イチジョウさんはにっこり微笑んで言った。


「そう、この部屋は霊の溜まり場になっているんだよ。

それで入居者がしょっちゅう変わっているからワケあり物件になったのね。

ここに住み続ける限り、毎晩うなされることになるわよ〜。

でも安心して。

これは霊を吸い込むことができる特別製の掃除機なの。

だから、これで毎日欠かさず掃除をすること。いいわね!」


一気にまくし立てるイチジョウさんの勢いにおされて、思わず僕がうなづくと、イチジョウさんは納得したらしく笑顔で帰って行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る