第11話 王宮へ。そして、動き出す。 ー1
俺達は、借りていた宿屋を出て馬車に乗って王宮へ向かっていた。
「蓮斗く~ん」
川崎は頬を緩めながら、俺の背中に手を回し猫のように頬を俺の胸辺りですりすりしながら甘えてくる。朝からことあるごとにずっとこんな調子だ。俺は最初は皆の前だからやめろとか色々注意はしたが、本人に改善する気がないので諦めた。今は、頬をすりすりしてくる川崎の頭を撫でている。川崎にそう頼まれたからだ。それにしても……川崎の髪の毛はサラサラで気持ちいいな。
「あのー……お二人さん?そういうのは別の場所でやってくれない?」
秀治がそう言ってくる。その提案?に皆も同意なのかうんうんと頷いている。
「だって、川崎にそう言っても全く聞く耳持たないし……。都合の悪いことは聞こえない耳なのか?」
「……?なんか言った?蓮斗君」
「いや、何でもないよ」
俺がそう言うと再び川崎は俺の胸に顔を寄せ、すりすりし始めた。
ー一時間後ー
俺達を乗せた馬車が王宮に到着した。俺達は馬車から降りて王宮の中へと向かう。こんな大人数で行動していればそれはもう目立つわけで。
「勇者様達が帰還されたぞ……!」
「勇者様ーー!!」
「おい!王女殿下に急ぎ報告だ!!」
など様々な声が聞こえる。
王宮の中へ入ると、誰かから報告を受けたのか、王女のレミリーが息を切らしながら走ってこちらへ向かってきた。
「はぁ、はぁ、はぁ……。よく無事に帰還されました……。私、あなた方達が昨日大迷宮から帰ってこないのでもう心配で……!」
王女が心配しているかのような表情をつくる。
……王女のリファード・レミリー……。どこか暗いオーラを纏っているような……。一応王女のレミリーも警戒対象に追加しておこう。何かあってからでは遅いからな。
俺達は王宮の中を謁見の間の方へ歩いていく。騎士団団長のレギーロは歩きながら、アリスレナ大迷宮であった出来事の説明を始めた。
それを聞いた王女の顔がみるみる驚愕の色に染まっていった。
……どこか白々しいな……。あの王女。何か隠しているかもしれないな……。でも、この王宮の兵士も側近も誰一人気づいていない。誰か一人くらい気づいていてもいいはずなのに……。何か原因でもあるのか?
俺はそう考え、魔法を発動する。気配遮断から派生した「隠密」も忘れず発動する。因みに俺のステータスはこれだ。
柏沢 蓮斗Lv7 職業:生成魔術師
生命力 18500
魔力 19000
魔法展開速度 19700
魔法耐性 20600
想像力 20600
スピード 18000
攻撃力 19300
防御力 18300
スキル
魔法生成(+魔法式省略)(+威力維持)、無詠唱、全属性耐性(+反射)、気配遮断(+隠密)、気配察知、状態異常耐性、変幻自在、身体強化
因みに変幻自在はステータス値を底上げはできないが、割り振りを変えることができる。身体強化は、主に五感や魔力などの能力を強化することができる。
「サーチ」
すると、おれの頭の中に多数の情報が入り込む。不要な情報が大半を占めており、正直頭が痛かったがそこから必要な情報を探し出す。すると……
魅了(広範囲):威力 最小限
支配(広範囲):威力 最小限
(……この二つが原因か……。じわじわ効果が現れるって感じか……。どこからそんなものが……)
そう思って更にサーチすると……。
効果範囲:王宮全体
場所:不明
……?場所がわからない?城内全体に効果が及んでいる?このままだと……俺は状態異常耐性があるから大丈夫だけど、他のやつらが……。
魅了や支配の魔法の発生元の心当たりを探そうと更に思考を重ねたその時ー。
「……どうされました?」
王女がすごい近い距離で抑揚のない無機質な声でそう問うてきた。
「……いえ。何でもありません」
俺は、ニッコリと作り笑顔でそう答える。
「……そうですか」
(……おかしい。おかしいわ……!なぜ私の魔法「服従」が効かないの……!)
そう。レミリーにとってこの事態は想定外だった。レミリーの魔法「服従」は、相手に本音を吐かせたり、命令を強制的に聞かせる事のできるものである。勿論聞かせられる命令にも、どれくらいの本音を吐かせられるか、対象人数にも限度はあるが。レミリーはメラルース王国でも指折りの魔法の使い手だ。レミリーにとって下級の存在である兵士や、ましてや異世界にきたばかりのひよっこどもなど簡単に魔法にかけられる。でもなぜだか、あの男だけはいくら魔法をかけても無意味だった。今も「服従」の魔法をかけ続けているがまるで意味を成さない。
(……まあ、そんなこと考えてても仕方ないわ……。ふふふ……こうしている間にも着実にあの計画は進んでいる……)
「ふふふ……」
「……?どうかしましたか?」
高峰が急に嗤い始めた王女に疑問顔で尋ねる。
「いえ。今日あなた方が無事に帰ってきたことが嬉しかったもので」
レミリーは内心でどす黒い笑みを浮かべ、この計画の成功を心待ちにするのであった。
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