第12話 王宮へ。そして、動き出す。 ー2
俺達は、謁見の間に来ていた。天井にはシャンデリア。床には赤色の絨毯が一面にしかれ、一段高いところには国王陛下が椅子に鎮座していた。
「よくぞ無事に帰還してくれた」
国王陛下が労いのような言葉をかけ、静かに微笑む。
(……。計画の準備は着々と進んでいる。儂の目的である人間族による世界の支配……。もう少しで実行に移せるのだ……!)
そう。国王陛下は世界を支配し、全種族を強制的に従わせ、奴隷制度の確立等を目的としている。人間族が一番上である事を示すために。そのためにレミリーの魔法「誘導」によって地下の深い方から魔物を誘き寄せ、勇者どもに恐怖心などを植え付けて魔法にかかりやすい状態をつくりあげたのだ。とはいえ、90階層からボスモンスターが誘導されてくるのは予想外だったが。勇者どもをあと少しで支配できる。そう考えると思わず嗤ってしまう。
「クックック……」
この暗い嗤いは誰にも聞かれることなく虚空へと消えていった。
ー国王陛下の一室にてー
「レミリー。魅了と支配の魔法の効果はどうじゃ」
「はい。明日か明後日には勇者共々私たちの忠実な手駒となるやと思います」
「そうか」
「それともう一つ報告したいことが……」
「なんじゃ?」
「……あの例の男のことです。柏沢蓮斗とかいう」
「……その男がいったいどうしたのじゃ」
そう。レミリーにとって気がかりなのは蓮斗のことだった。レミリーの魔法である「服従」が効かない上に、この王宮内のある場所に仕掛けた巨大な魔石「ラーニャ石」に魅了と支配の魔法を付与し、王宮内全体に効果が及ぶようにして対象はレミリーと国王陛下以外に設定したはずなのだが、それもどういう訳だか全く効果がなかった。この時代に状態異常に対する耐性スキルを持つ奴などいないし、ましてや、ラーニャ石は付与された魔法に耐性を付与するため、どんな魔法であろうと魅了と支配の魔法の効果など打ち消せるはずはないのだ。だが現にあの男は、魔法の効果の影響を全く受けていない。その事を国王陛下に報告した。
「うむ……。その男はちょっと厄介かもしれんな……。なんとか排除せねば……」
「そうですね。なんとかあの男を排除出来ればいいのですが……。こっちの狙いも少々勘づかれているかもしれません……」
「本当に厄介この上ない男だ……」
国王陛下とレミリーは蓮斗をどう排除するか暫く検討し合った。その後、案がまとまったのか、二人は口元にニヤリと不気味な笑みを浮かべながらこの作戦の成功を確信した。
ー夜の王宮内地下にてー
皆が寝静まった王宮内に地下に一人の男の姿があった。
「……どこにあるんだ?ラーニャ石とかいう魔石は」
なぜ俺がこの事を知っているのかと言うと、身体強化を応用して聴力を強化して、王女と国王陛下の会話を盗み聞きしたのだ。犯罪だって?こ、ここは日本じゃないから大丈夫……じゃね?
レミリーと国王陛下の話によると、地下のどこかにラーニャ石なる魔石があるらしい。詳しい場所まではわからなかったが。その魔石には「魅了」と「支配」の魔法が付与されているらしく、並大抵の魔法じゃラーニャ石を破壊できないらしい。後で調べてわかった事だが、ラーニャ石は希少な物らしくなかなか手に入らないとか。一体どこで手に入れたんだか……。
俺は、地下の暗い所をまっすぐ進む。すると、巨大な扉が目の前に現れた。その扉には魔法陣が描かれており、一定の手順を踏まないと開かない仕組みになっているようだ。
(……この部屋にラーニャ石があるのかはわからないが、確かめる必要はありそうだな……)
俺は手順を知るため魔法を発動する。
「解析」
すると、色々な情報が頭の中に流れ込んで来る。
闇魔法と風魔法同時付与、解錠するための魔法式構築、必要魔力1000、防御結界の解除、攻撃系魔法トラップ解除………………。
俺はそれらの情報を元に解錠を開始する。そして、半分くらいまで解錠が終わったその時ー。
地下に複数の足音が聞こえた。俺は気配察知こそ発動していなかったが、地下に隠れる場所もなければ足音も響きやすいのですぐにわかった。俺は作業を中断して後ろを振り返るとそこにはー。
「……こんなところで何をなさっているのです?」
王女と国王陛下、俺のクラスメイト達と勇者高峰の姿があった。皆、目がどこか虚ろであり、正気でないことがうかがえる。
(……一足遅かったみたいだな……)
俺は内心歯噛みしながら、目の前の王女と国王陛下を睥睨する。
「これはこれはレミリー王女と国王陛下。また随分と手荒い歓迎だことで」
「貴様が儂らの会話を盗み聞きしていたのは想定済みじゃ。それを利用して誘き出させてもらった」
「……やはりか」
途中から薄々気づいてはいた。この地下は広すぎるし、厳重な警備もトラップもなにもないうえに、この巨大な扉一つ以外なにも見当たらなかったからだ。
「因みにその扉の中には何もないわ」
「……ダミーだったということか。じゃあラーニャ石は一体どこに……」
「そんなことを貴様が考える必要はない。貴様の仲間達にどうせ殺されるのだからな」
国王陛下はそう言うと、指をパチンと鳴らした。すると、高峰やクラスメイト達が、俺を中心に円形になり、俺を取り囲んだ。
「大人しく何もできないまま死ぬがいいわ」
王女がそう言い、国王陛下と共にニタリと不気味な笑みをうかべるのだった。
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