序章を読み終えたとき、思わずページを閉じて深く息をつきました。静かな物語のはじまりなのに、なぜか胸の奥がじんとする――そんな読後感でした。
「命を捧げることは、騎士の本懐なのか?」この問いに“×”をつけるイオルクの姿には、思わずはっとさせられました。決して声高に反抗するわけでもなく、でも譲れない信念がある。彼の無骨さのなかに滲む迷いと優しさに、人としての痛みが重なって、私たちの心にもそっと届いてくるんですよね。
そして、ユニス王女。彼女の登場はまるで光が差し込むようで、まだ幼いはずなのに、どこか見守られているようなあたたかさがありました。イオルクとの間に芽生える“対等な信頼”が、とても丁寧に、でも自然に描かれていて、そこがまた素敵なんです。
これはきっと、誰かのために、そして自分自身のために“もう一度生きる”物語。そんな予感をひしひしと感じました。続きを読みたくなる作品です。