第4話 冬

2月来月卒業ってときに、噂が広まる。


栞先生お腹大きいらしい。

先生結婚してないよね。だから自宅謹慎らしいよ。

「ショウタおまえじゃないだろうな?」

「ちげーよ」

夏休みがおわり、部活を引退してからは電車で通っていた。

先生は今までどおりになろうと言った。そんな先生にイライラして喧嘩したままだった。

そして最後に会った日それ以来会ってなかった。

先生からも連絡ないし、こっちからもしなかった。意固地になっていた。


その頃栞先生は学校からも親からも誰の子が言うように責められでいたが頑としていわなかった。私の子の一点張り。

「気が着いた時にはおろせなかったみたい。もう7か月になったらしい。

仕方ないから育てるみたいよ。

お父さんに激怒して殴られて、家から出て行くように言われたみたい。みやちゃん(栞先生のお母さん)泣いてたわ。

3月いっぱいで退職願出したみたい。あの栞ちゃんがねぇ。」

と母さんから聞いた。


そして3月先生がいない卒業式。


次の日、先生を携帯で呼び出した。家から離れた大きな公園に栞ちゃんが歩いてきた。

ほんとだ。元から細い身体だから余計に大きなお腹が目立つな。

「卒業おめでとう。」

「ありがとう。本当だったんだ。俺の子だよね?」

「違うよ。私の子。そんなことよりやっと入った大学頑張ってね。」

って去ろうとする、栞ちゃんの手をとった。

「嘘つくなよ。俺働くよ。一緒に育てよう。」

「もう帰ってお願い。もう会わない。さようなら」

そう言って手を乱暴に振りほどいて去る。後ろ姿を眺めるだけだった。


それから携帯も解約したのかラインも電話も繋がらなくなって連絡もとれなくなった。家にもいないみたいだ。

母に聞いたけど知らないって言われた。

(なんでだよ!何もかもなかったことにするのかよ?目の前から消えてしまうなんて。)

それよりも何より何もできない自分に一番腹が立った。後悔した。

なんで最後に一緒に帰った日喧嘩したんだろう。なんでもっと早く会いに行かなかったんだろう。最後に会った日、手を離してしまったのは自分だった。

そんなことわかっていた。自分に覚悟がなかったこと。お腹が大きい先生を見て愕然とした。先生はやっぱりお見通しだった。

自分のしてしまったことがようやくわかった。

3月も終わりになり県外の大学へ行くため引越しした。

携帯の音楽からは米津玄師のレモンが流れていた。

(もどらない幸せがあること…)

故郷を離れる新幹線の中で涙がとまらなかった。

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