第3話 秋
私ダメな先生ね。
こんなこといけないとわかっていた。
春に久しぶりにあったショウタはすっかり男の子だった。背だって私より大分大きいし肩幅も広くて急にドキドキした。
駐車場までの道を歩いてた時にさりげなく道路側歩いたり、重たい画材を持ってくれたりなんかして優しい気配りがうれしかったよ。
そしてだんだん好きになるのが止められない。
サッカー部の部活が終わるまで、美術室の窓から眺めていた。
学校では男女問わず慕われて人気者、頭もよかった。そしてサッカー部のエース。
後輩の女の子からは憧れの先輩。
なんか悩んでいるみたいだった。イライラしたし、怒っていたりしていた。
でも、多分学校のことで私には話できないことみたい。
なんか力になれないかなって思った。
一緒に帰宅中たまたまカーラジオ聞いていたら、
「この歌よくない?なんて曲?誰か歌ってるんだろう?」
「私もよくわからないわ。」
次の休みにたまたまいったCDショップで視聴でみつけたから、ショップのお兄さん捕まえて聞いた。
「若い子中心にはやっているんですよ。」
グリーンの歩みを流した次の日から
「自主練して帰るから先に帰っていいよ。」
その日から毎日欠かさず、練習後の自主練。
帰りの車で寝てしまうことも度々あったし、宿題や勉強が疎かにならないように、母に頼んで夕飯食べさせて宿題してから家に送った。なんとか成績も維持できてホッとした。
高校最後の総体の県大会決勝。黄色の声援があがる。今日は私も大きな声で応援した。
本当に輝いているんだね。眩しい。
歯食いしばって相手の猛攻に耐える姿。余裕なんかないくせに仲間を励まして笑顔みせる姿。
決勝後のキャプテンとしての言葉。
「仲間と自分達を支えてくれた人達。監督、コーチ、家族。応援してくれたすべての人に感謝しています。」
私もその1人になれたような気がして、その言葉に涙が出た。
ねぇ、知ってる。私体育大会やサッカーの練習をみて歓声あげてる女子高校生に嫉妬してたんだよ。
大人の女の余裕ないよね。
それからしばらくして元カレから別れを切り出されたとき、
「もう他に好きな人いるんだろ?」
だって、バレてたんだなって。
その後ショウタに逆ギレしてあきれられた。反省しました。
ショウタのせいじゃないよねー。本当。
でも卑怯だよ。県大会決勝で決勝ゴールを決められたらみんな恋におちると思う。
私がうっかりしていた。その日の朝母は温泉に父と出かけていったことを。
集中してないよなって思った瞬間、押し倒された。男のショウタにドキッとした。
近くでみると少し幼さが残っている。やっぱ、私好きなんだなって思った。
でも私先生だしなんて理性の最後の抵抗は虚しく、身体は正直だななんて冷静な自分がいた。
一生懸命なショウタ、可愛い。乱暴にされてもよかった。だって今は私だけみてくれてるもの。ショウタとひとつになって幸せだった。
でもこんなことダメだよ。
明日からは先生と生徒にもどろうね。
なのに、ショウタは今が大事だった。
でも、私はそこまで子供ではないのよ。ショウタの未来に自分がいることが描けなかった。私は25でショウタはまだ18。
ある日ショウタは私の態度に腹を立て喧嘩してしまった。その日は一緒行く最後の日だった。ショウタは部活引退したから。
最後に会ったとき、私は言った。
「もう2人で会うのはやめましょう。ショウタに変な噂でも流れたら大学の推薦に影響するし。」
「先生には僕が生徒にしか見えないんだね。」
って悲しそうに笑ったのが最後だった。
秋深くなった日、車のラジオから流れる三代目の歌を聴きながら思った。
(愛になれない恋かぁ?)
その時覚悟がきまった。
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