5章 グラヴィティ・ジェネレート③

 ***


「おい! いったいどういうことなんだ!?」

「不審者がいるって本当なの? 警察を呼んだ方がいいんじゃ?」

 外に出てくるなり、客たちは爆発したのか、口々に不安を漏らした。

「きっとここまでくれば大丈夫だと思います。できればみなさん、もう少し離れた方がいいのかも……」

 結香は必死に客をなだめようとしている。

 私は吉祥のことが気がかりだった。

 率先して桐生を追うと言い出したから任せたものはいいものの、あれほどの異端能力者を一人で引き受けさせるのは少々無理があったのかもしれない。

 現に私はこれまで、吉祥にとっての大切な存在を守ることができないでいた。

 私がCIPの人間として人を救えなかったことに、言い訳をしようとは思わない。

 ただ私には、親友と心を許せる同級生を失い、彼がどんな思いで私たちの仲間になり、桐生に立ち向かっているのか、想像ができなかった。

 少なくとも今すべきことは、モールから少しでも客を遠ざけること。

 まもなくして、モールが戦場になることは避けて通れない。

「……ん、君は?」

 結香が派手に目立ちすぎたようで、客の注目が一斉に集まる。

「ちょっと待って、なんかこの子見覚えがあるんだけど……」

「ああ、そうだ! たしかにテレビで見たことがあるような……」

「え……?」

 今の結香はアイドルとしてはかけ離れた格好をしているというのに、オーラが隠し切れていないのか、みんなが疑問を持ち始めた。

 さすがにここでも騒ぎになるのはマズイわね……。

「みなさん申し訳ありません、この子は私の連れなんです。……ははは」

「……ちょ、美咲」

「いいから、私たちも早く吉祥と合流しましょう。――失礼します、ははは」

 結香を背中に隠しつつ、強引に後ろに追いやる。このまま人だかりから離れれば……。

 そう思っていた私に、冷めた声がかけられる。

「……ねえ、あなたたち、もしかしてCIPの人間なの……?」

「――!?」

 結香のものではない女の子の声に思わず振り返ると、彼女はそこに立っていた。

 身長が拳二つ分ほど低く、フードを深く被っているうえに当人が斜め下を見ているせいで、その表情がまったく読み取れない。

 まごうことなき漂う負のオーラ。その中に人にはないエネルギーを感じた。

「ねえ、そうなんでしょ……?」

 ぼそぼそとした喋り方でようやく顔を上げたと思ったら、少女は薄く口を伸ばしていた。

「美咲、この子ってもしかして……」

「ええ、間違いないわね……」

 私と結香と〝異端能力者〟の三人が通れるほどの〝ワームホールを引き起こす〟。

 ごめんなさい吉祥……また遅れることになりそうよ……。

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