第7話 勇羅side



―午後三時四五分・神在中央公園。


「それでー…。上原先輩は具体的に、自分の力の制御する方法の仕方が知りたいと」

「す、すすすすみませんっ! 皆さん忙しいのに。わっ、わざわざ集まって頂いて…」


茉莉が東皇寺学園の女生徒・上原彩佳にメールを送った数十分後、彩佳から返答の着信が来た。彩佳の返答は翌日の放課後なら時間が取れるとの事。

そして勇羅達は、雪彦が彩佳の異能の力によってうつ伏せで豪快に突っ伏した場所…。もとい彩佳と初めて会った場所に、丁度下校時で東皇寺学園の制服を着た上原彩佳と落ち合わせていた。


「学校の方には、ばれてないんですか?」

「な、なんとか…」


彩佳へ一番気になっていることを口にする琳。もし東皇寺学園で異能力者だとばれたら、陰湿ないじめどころでは済まされない。


「学校のみんなに能力者だって、ばれるのが恐くて…。でも学校自体よくない噂が立ってるのは、嫌って位に分かってるから、普通に生活したくて…。今まで授業中や休み時間の間も、自分の力を抑えるのに集中して、気を使うのが大変で大変で…。でもこれ以上、自分の力が抑えられなくなったらと思ったら、凄く怖くなって。私どうしたら…」

「能力者だってばれたら、先輩自身がどうなるか分からないですもんね」

「それで学園外なら練習できる…と、思った訳か」


話を聞けば彩佳は雪彦や万里と同じ二年生。しかし彩佳の相談内容自体が異能力の内容を持ち込んできている。異能力を使えない勇羅や雪彦達では、的確な対処が出来ないのは確実だ。

それなら彩佳と同じ異能力者でかつ、比較的力の制御にも慣れている瑠奈や琳の方が、この相談に向いていると泪が判断し、結局探偵部メンバー全員で夜中に数百件のメールを、茉莉へ送り込んだ張本人でもある彩佳に会いに行く事になった。


「今まで力が暴発した事は?」

「大丈夫ですっ! 力の暴発そのものはしてませんから……が、学校にはばれてー…ない、かも?」

「ばれてない?」


彩佳のあやふやな発言に何か嫌な予感がする。もし学園内で力が暴発していたら、確実に彼女はおしまいだ。


「ねぇ? 力の使い方は誰かに…同じ異能力使える人に教えてもらった?」

「使い方ですか? え、ええと独学ですっ。この力が使える様になったのが数ヶ月程前だし、周りに使える人も居なかったので」


異能力者の覚醒は生まれた時から力を持っている先天的な覚醒と、最初は普通の人間と変わりないが遺伝子異常による後天的な覚醒がある。瑠奈や琳は前者で、今まで自分の力を知らなかった彩佳はおそらく後者だ。更に異能力を独学で制御するとなると、体力だけでなくそれ以上に、己の持つ異能の力を抑えこむだけの強靭な精神力も必要とする。

少ししてふと何か思い付いたかの様に泪が口を開く。


「あの、上原さん。暴発した事はないかも、って言いましたが…それは『人前』では暴発してないとか?」

「は、はいっ! 『人前』では暴発してませんっ!」

「極端な話になっちゃうけどさ…。それってつまり、学園内で力が暴発しちゃってるって事ですよね……」

「あ……っ」


学園内で暴発した、と言う勇羅の言葉を聞いた彩佳は一気に茫然となる。


「ち、ちょっと勇羅ちゃんっ!!」

「すすす、すみませんっ! わわわ私の能力が及ばないばっかりに…」

「まって。貴方の周りで最近何か変わった事は?」


勇羅の失言や雪彦の慌てぶりに臆する事なく、泪は冷静に彩佳を刺激しないよう、ゆっくり情報を聞き出す。


「い、いえ。その…力が使える様になった以外は普通です」

「よかったぁ」


彩佳が何もないと聞いて安堵する勇達だが、次の彩佳の発言がこの場にいる全員を戦慄させた。


「その、ただ…。学校の生徒会が、近々『異能力者狩り』をするって事になっていて…。いつ自分の力がバレるかが…本当に、恐くてたまらないんです」

「………えっ」


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