2時間目 約束の場所

家に帰るとまず最初に向かったのは二階にある柚木の部屋だった。

私と上条先生が一緒にいる理由を家に帰ると互いに確かめ合うようにたまにこの部屋に来る。

「柚木、僕らの約束覚えてるよね。」

「はい・・・」

柚木はカーテンが揺れている隙間から見える満月を見つめ昨日のように感じるあの日の事を思い出を・思い出す・・

中1の頃、柚木は両親と距離に距離を置かれ親と暮らしていた。

そんなある日事件が起きた。

家の中に殺人鬼が入ってきたのだ。

一階では両親の叫び声が聞こえ柚木はただ部屋の中でおびえている事しかできなかった。

両親の叫び声が消え犯人はついに柚木の部屋には行って来た。

「お嬢ちゃんの事ずっと探してたよ。」

「ひぃ」

男は部屋の真ん中に座りおびえている柚木の手首をつかみ男が入ってきた扉に乱暴に柚木を叩きつけた。

「ッッッ、痛い」

「やぁっとお嬢ちゃんを殺せる。」

柚木はもうだめだっと目を閉じた。

すると生暖かい何かが頬についたのを感じた。

自分の血じゃないのを理解し男を見ると男が黒服の青年に刺されていた。

「おじさん、残念だね。死ぬのはおじさんだよ。」

男は抵抗もせずあふれる自分の血だまりに倒れこむ。

「大丈夫?痛く無かった?」

優しく心配そうな表情をし柚木の近くによる。

「お兄さんは・・・誰?」

柚木は青年を見て安心しきった顔をした。

「俺は・・・」

青年は柚木の頬についた血を手で拭い柚木の頭を撫でた。

「上条 狭木、君を好きになった一人の男・・・かな?」

「たすけてくれてありがとう。」

上条はその言葉聞き嬉しそうに微笑んだ。

「ねぇ、君は一人になってしまったけど、俺と約束しないか?」

「約束?」

「そう、『俺は君を守る。君は死ぬまで俺から離れちゃいけない』っていう。」

柚木は少し考えた後、上条に小指を立てた。

「うん、約束。」

これが約束だ。

この約束が無ければ私の命はもう終わっていただろう。

「上条先生、ありがとう御座いました。」

「あぁ・・・約束は絶対だからな。」

上条はあの日のように優しく微笑む。

上条の優しさに何かが揺らぐのを感じながら部屋から出て行くのであった。



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上条先生との約束 影狼 @yodukikagami

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